発信者情報開示請求とプロバイダ責任制限法
Japanese girlfriends hanging out on Shibuya streets of Tokyo. Japan.

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弁護士大熊 裕司
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プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求

プロバイダ責任制限法とは

プロバイダ責任制限法の正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」という長い名称です。そのため、一般には「プロバイダ責任制限法」「プロ責法」などと呼ばれています。

プロバイダ責任制限法に書かれていること

プロバイダ責任制限法1条には、「この法律は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。」と規定されています。

簡単にいうと、インターネット上で違法な投稿があった場合に、①サイト管理者などの「特定電気通信役務提供者」(プロバイダ)が損害賠償責任を負う場合を限定することと、②被害者の発信者情報開示請求権について規定したものと理解できます。

プロバイダとは

プロバイダ責任制限法ではプロバイダのことを「特定電気通信役務提供者」といいます。通常プロバイダとはインターネットサービスを提供している会社(NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI、OCN、ソネットなど)を思い浮かべますが、プロバイダ責任制限法ではサイト管理者もプロバイダとなります。
個人で運営している匿名掲示板やブログもありますが、その場合、掲示板等の運営者である個人がプロバイダとなります。

「特定電気通信による情報の流通」とは

プロバイダ責任制限法1条では、「特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合」と書かれているのですが、この法律用語もよくわからないところです。上記のとおり、プロバイダを「特定電気通信役務提供者」と定義していることからも推測できますが、インターネット上に違法な投稿が公開されている状態を意味すると理解すれば十分です。

匿名掲示板(5ちゃんねる等)やブログ、クチコミサイトなどで違法な投稿がなされていれば、発信者情報開示請求の対象となります。

メール・LINE・DMは開示の対象となるのか

最近よく相談にあるのが、LINEやツイッターのDMなど個人と個人が1対1でコミュニケーションをとるツールで誹謗中傷が行われた時に、発信者情報開示請求ができないかという相談です。

メール・LINE・DMは1対1の通信ですので、メッセージが公開されることはないことから、「特定電気通信による情報の流通」とはいえず、発信者情報開示請求の対象ではないことになります。

なお、発信者情報開示請求は難しいですが、会社のお問合せフォームに、特定の社員の名誉を毀損する内容の送信を行ったケース(例えば、「営業課長の〇〇〇〇は、部下の▲▲▲▲と不倫をしているので調査して下さい」という内容)で、被疑者を「氏名不詳」として刑事告訴をする方法をとることもあります。

開示される発信者情報は

経由プロバイダから開示される発信者情報は以下の情報となります。

  1. 契約者の氏名または名称
  2. 住所
  3. 電話番号(発信者のもの)
  4. メールアドレス(発信者のもの)

発信者情報開示請求の手続

2段階の開示手続き

発信者情報開示請求を行うにあたっては、①誹謗中傷が書き込まれたサイト(掲示板、ブログ、SNSなど、「コンテンツプロバイダ」といいます)管理者に対するIPアドレス、タイムスタンプなどの開示請求、②IPアドレスによって特定された経由プロバイダ(NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI、OCN、ソネットなどのインターネットサービスを提供しているプロバイダ)に対する氏名、住所などの開示請求という2段階の開示請求を行う必要があります。

このように、2段階の開示請求が必要なのは、各種サイトが匿名性によって成り立っているものが多く(情報発信するにあたって氏名、住所などの個人情報を登録する必要がない)、サイト管理者(コンテンツプロバイダ)に開示請求をしても、発信者の氏名、住所の開示情報を得ることは出来ず、投稿者の特定のためには、さらに携帯電話会社などの経由プロバイダに氏名、住所などの開示を求める必要があるからです(経由プロバイダは、契約者の住所、氏名などを把握しているのが通常です)。

MVNOとは

MVNOとは、Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略称です。自社では携帯電話などの無線通信設備を所有せずに、他社から借り受けてインターネットサービスを提供する会社です。いわゆる格安携帯を思い浮かべると分かり易いと思います。

最近では、MVNOと契約をしている人も多いので、発信者情報開示請求が2段階にはとどまらない場合もあります。格安携帯会社は、NTTドコモ、KDDIなどの大手キャリアの回線を借りてサービスを提供しているため、サイト管理者(コンテンツプロバイダ)からIPアドレスの開示を受けてIPアドレスを調査すると、大手キャリアの回線を使用しているという結果がでます。しかし、投稿者の発信者情報は、大手キャリアではなく、回線を借りている格安携帯会社が保有しています。

開示請求においては、MVNO(格安携帯会社)がWHOIS検索で直ちに分かったり、どこのMVNOなのかを簡単に教えてくれる場合もありますが、MVNOの開示にあたっても仮処分決定が必要だといわれることもあります。その場合は、MVNOを開示してもらうための仮処分が必要となります。

コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求

掲示板、ブログ、SNSなどの管理者をコンテンツプロバイダといいます。このような管理者(会社だけでなく、個人が管理しているものもあります)もプロバイダ責任制限法の対象となるプロバイダです。

コンテンツプロバイダ(サイト管理者)は、通常投稿者の氏名や住所は把握しておりませんので、発信者情報開示請求をしたとしても氏名、住所が開示されることはなく、IPアドレス、タイムスタンプが開示されるのが殆どです。なお、下記の経由プロバイダから、発信者の特定のために追加の情報の提供を求められる場合がありますが(例えば、接続先IPアドレス、ポート番号、投稿用URLなど)、追加情報の開示に応じてもらえるかはサイトによります。

なお、下記のとおり、経由プロバイダに対する発信者情報開示請求については、裁判所の判決が必要とされるのが原則であり、任意に氏名、住所などが開示されることはありません。コンテンツプロバイダ(サイト管理者)の場合は対応がまちまちで、任意にIPアドレスなどの開示に応じてくれるサイトがある一方で、仮処分手続きによる裁判所の開示決定を求めるサイトもあります。

大手企業が管理しているサイトは、仮処分手続きによる裁判所の開示決定を求めるところが多いといえます。IPアドレスといえども、発信者の特定につながる重要な個人情報であるという認識があるものと思われます。

経由プロバイダに対する発信者情報開示請求

経由プロバイダは、契約者(投稿者)の氏名、住所などを把握していますので、誹謗中傷を書き込んだ者の開示が可能です。
もっとも、上記「コンテンツプロバイダに対する発信者情報開示請求」でも説明しましたが、経由プロバイダにとって、顧客である契約者の氏名、住所などは重要な個人情報であり、簡単に開示することは法律上認められていません。経由プロバイダからの情報開示によって、その後損害賠償請求、場合によっては刑事告訴につながりますので、発信者情報の開示には慎重になることは当然です。

そのため、経由プロバイダは、契約者本人の同意がない限りは、裁判所による開示を命じる判決が確定しないと、開示には応じないという態度をとっています。

個人情報保護のため原則として裁判手続きが必要

上記のとおり、発信者情報開示請求は、プロバイダの契約者の氏名、住所、メールアドレスといった個人情報の開示を請求するものです。
投稿内容が請求者の名誉権などの権利を侵害していることが明白であるか否かの判断は難しく、プロバイダも法律の専門家ではないので、その判断が困難なのが実情です。名誉毀損などの権利侵害が成立しないにもかかわらず、プロバイダが顧客の個人情報を開示したということになれば、大きな社会問題となり、損害賠償請求を受けかねません。そのため、プロバイダが発信者情報を開示するには、契約者(投稿者)の同意がある場合は別ですが、裁判所が開示を命じる判決を得ることが必要になるのです。

2回以上の裁判手続きが必要なこともある

以上説明したとおり、発信者情報の開示を受けるには、基本的には裁判所による決定や判決が必要であり、それもコンテンツプロバイダ(サイト管理者)→経由プロバイダ(携帯電話会社など)に対する2回の裁判(MVNO(格安携帯)の場合は3回以上)が必要となります。

したがいまして、誹謗中傷の加害者を特定するのは、そう簡単なことではないことをご理解いただけるのではないかと思います。

接続先IPアドレス

接続先IPアドレスとは

コンテンツプロバイダ(サイト管理者)からIPアドレスが開示されて、投稿者が利用した経由プロバイダ(インターネットサービス事業者)が判明したとしても、経由プロバイダによっては投稿者を一人に特定できない場合があります。
特に、スマートフォンの通信を利用した場合に多く見られるのですが、同一のIPアドレスを複数名が使用しているため、サイト管理者から開示されたIPアドレスだけでは、投稿者(契約者)が一人に絞れないのです。

このような場合、経由プロバイダから、「接続先IPアドレス(投稿先IPアドレス)を教えてください」と追加情報を求められることがあります。接続先IPアドレスとは、ウェブサイトのホスト名に割当てられたIPアドレスであり、サイト管理者から開示された接続先IPアドレスを併せて調査してもらうと、投稿者(契約者)が一人に絞れることが多いです。

サイト管理者が接続先IPアドレスを開示しない場合

サイト管理者が接続先IPアドレスを開示してくれるなら、それを前提に調査をしてもらえるのですが、サイト管理者が接続先IPアドレスを開示してくれない場合は、困難な問題が生じます。このような問題が生じるサイトとして代表的なものは、ツイッター、5ちゃんねるなどです。

実は、接続先IPアドレスは、サイト管理者から教えてもらえなくても、サイト管理者が公開している情報から、自分で調査することは可能です。しかし、経由プロバイダは、サイト管理者から開示された接続先IPアドレスでないと、直ちには調査を行いません。調査が行われない状態が続きますと、アクセスログが消去されてしまい、投稿者の特定はできなくなってしまいます。

そこで、実務的には、発信者情報消去禁止の仮処分を申し立てて、裁判手続きの中で発信者(契約者)の特定を行うことになります。

仮処分決定に担保の意味

担保とは

サイト管理者に発信者情報開示や削除を命じる仮処分決定を得るためには、担保が必要となると説明されることがあります。担保が必要とされているのは、債務者(サイト管理者)が違法な保全命令によって被る可能性のある損害を担保するために、開示・削除を請求している債権者に対して予め提供することが求められるものです。

インターネット仮処分事件に限定して説明しますと、違法な保全手続きとは、偽造された証拠を提出するなどして、仮処分決定を得たような場合を意味します。このような違法な手続きにより仮処分決定を得て、IPアドレスが開示されたり、投稿記事が削除されたような場合、 債務者(サイト管理者) は投稿者から損害賠償請求を受ける可能性があります。そのような場合に備えて、 債務者(サイト管理者) が優先的に弁済を受けるために、債権者に対して担保提供を要求しているのです。担保の提供は、債権者の最寄りの法務局で供託の方法で行うことになりますので、裁判所に現金を持参して提供するわけではありません。

担保の金額ですが、一般には、開示請求が10万円、削除請求が30万円と決定されることが多いです。ただし、開示請求や削除請求の対象記事が多かった場合には、担保金額が増加されることもあります。
また、5ちゃんねるのように、無審尋(相手方を呼び出さない手続)で開示決定を得るような場合は、担保金は10万円ではなく30万円に増額されることが通常です。

インターネット仮処分事件は、 債務者(サイト管理者) からIPアドレスの開示を受けたり、投稿記事の削除が実現した場合には、当初の目的を達成したことになりますので、一般的には仮処分手続を取り下げることになります。仮処分とは、あくまでも「仮」の処分に過ぎないのですが、仮処分により当初の目的を達成できてしまいますので、このような仮処分を「満足的仮処分」と呼んでいます。
目的が達成されて、仮処分手続を取り下げれば、一定の時間はかかりますが、提供した担保も戻ってくることになります

弁護士費用とは別に、将来返金されるにしても、一定の担保金がかかることになりますので、仮処分を申し立てるときの金銭的負担は大きなものであるとは言えます。なお、ツイッターなど、担保を求めないサイトもありますが、全体的にみると極めて少数だと思います。

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弁護士 大熊 裕司

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▼ 料金について

相談料

30分 5500円になります。
発信者本人(加害者)の方からのご相談にも応じます。
なお、法律相談後、事件を受任するに至った場合は、法律相談料は不要です。

ネット書込み削除、書込み者特定の費用

投稿記事の任意削除

基本料金:5万5000円~
※サイトや削除件数によって料金が異なります。

投稿記事削除の仮処分

【着手金】 22万円~
【報酬金】0円

発信者情報開示命令申立(書込み者の氏名、住所の開示)

【着手金】44万円~
【報酬金】0円

書込み者に対する損害賠償請求

【示談交渉の場合】
・着手金:16万5000円~
・報酬金:17.6%

【訴訟の場合】
・着手金:22万円~
・報酬金:17.6%

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弁護士保険を使うことで、着手金が不要なケースもございますのでご相談下さい。

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