SNSに対する開示請求手続きの緩和
多くの人が日頃利用しているSNS(Twitter、Instagram、Facebook、YouTubeなど)は、いずれもアメリカの会社であり、IPアドレス、電話番号、電子メールアドレスなどの発信者情報はアメリカ国内で管理されていることから、アメリカ本社を相手方として開示請求をする必要があります。
また、上記アメリカのSNSは、発信者情報開示を求める仮処分申立書がアメリカ本社に届いてから、日本の弁護士事務所に委任状を発行し対応を依頼することから、日本国内のサイトに比べるとかなり時間を要することになります。
そうすると、ようやくSNSからIPアドレスが開示されても、アクセスプロバイダ(電話会社など)のログ保存期間が短いことも相まって、発信者の特定が困難となる事態も生じていました。
そのため、発信者の特定まで、最低でも2回の裁判手続きが必要であったプロバイダ責任制限法を改正し、1回の手続きで、発信者を特定できる新たな開示制度が設けられました。実際の運用が始まるのは2022年10月からですが、後日詳しい説明を発表する予定です。
SNSに対する削除請求に変化はあるか
上記のプロバイダ責任制限法改正は、開示手続きを簡易化する新たな開示制度を設けたもので、削除請求については何らの変更はありません。
ただし、Twitter、Instagram、Facebook、YouTubeなどSNS事業者は、2022年9月までに「日本における代表者」に関する登記を東京都内で行いましたので、日本全国どこに居住している人でも、東京地方裁判所にて削除仮処分を申し立てることができるようになりました。
会社法に基づく外国会社の登記義務
会社法では、外国会社が日本において継続して取引をしようとするときは、日本における代表者(日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければなりません。)を定め(会社法第817条第1項)、当該外国会社について登記をすることが必要とされています。そして、外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができないとも規定されています(会社法第818条第1項)。
これまで、上記アメリカのSNSは、日本における代表者を定め、登記をすることを怠っていました。そのため、法務省が主要な外国会社に日本における代表者の登記をするよう求めたところ、Twitter、Googleをはじめとする主要なSNSは、日本における代表者の登記手続きをするに至りました。
このように、日本における代表者の登記がなされましたので、これまでのような海外送達は不要となり、その分時間的、経済的な負担は減少しています。