
「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届いた場合は、対象投稿、請求されている情報、回答期限を確認します。これは開示について意見を聴く手続であり、書面が届いたことだけで損害賠償責任や犯罪の成立が決まるわけではありません。
不同意と回答しても開示されることがある
情プラ法6条1項は、連絡できない場合などの例外を除き、事業者に発信者の意見を聴くことを求めています。開示するかどうかは本人の同意だけで決まらず、不同意の場合にも法律の要件を満たせば開示されることがあります。無回答を同意とみなす制度でもありません。
回答期限は、まず照会書の記載に従います。ガイドライン上の回答書式では通常2週間という目安が示されていますが、すべての事件に共通する法定期限ではありません。間に合わない事情がある場合は、事業者に期限延長の可否を確認します。
回答に書くこと
- 照会された投稿と、自分の投稿・通信との関係
- 同意する情報の範囲、または不同意とする理由
- 投稿の前後の文脈、摘示した事実と意見・評価の区別
- 真実性、公益目的などの主張を支える具体的な資料
投稿をしていない場合や、家族・職場の共用回線などで契約者と投稿者が異なる場合は、その事情を説明します。推測で他人を投稿者と決めつけたり、事実と異なる説明をしたりしないことが大切です。回答書が裁判所へ提出される可能性と、資料から本人・第三者が特定される可能性も確認します。
事例ごとに確認すべき点
飲食店への低評価
「料理がまずい」という評価と、「食中毒を隠している」などの具体的事実の指摘は区別します。意見・感想の形でも、前提事実や表現の程度によって権利侵害が問題になります。「感想だから必ず適法」とする回答は避け、実際の利用状況と文脈を説明します。
職場のパワハラに関する投稿
誰のどの行為を指摘したか、録音・メール等で重要部分を裏付けられるか、公共の利害や公益目的をどう説明できるかを整理します。公益的なテーマというだけで、虚偽の具体的事実を広めることが許されるわけではありません。
知人の離婚歴や家族事情
限られた友人が知っていることや、過去にSNSで触れたことだけで、無制限の再公開が許されるとは限りません。公表された範囲、内容の性質、現在の生活への影響、公表する理由などを確認します。真実であることだけではプライバシー侵害の反論になりません。
政治家・著名人への批判
公的活動への批判であっても、具体的な事実の重要部分が真実か、根拠となる資料は何かを確認します。SNSの噂や他の記事が存在することだけで、真実性や真実と信じた相当の理由を基礎付けられるとは限りません。
容姿や人格への侮辱
民事上の名誉感情侵害は、社会通念上許される限度を超えるかが問題になります。事実の摘示がないこと、著名人であること、売上減少等が証明されていないことだけで、責任が否定されるわけではありません。刑事の侮辱罪とは要件を分けて検討します。
開示の後と示談
開示に同意したことは、損害賠償額を認めたことと同じではありません。開示手続の判断と、故意・過失、損害、因果関係などの賠償責任は区別します。示談を検討する場合は、対象投稿、削除、今後の投稿、支払額、守秘などの合意内容を具体的に確認します。
回答書は、照会された投稿と証拠に合わせて作成する必要があります。上記の事情は確認事項であり、そのまま転記して不同意理由にするための定型文ではありません。詳細は誹謗中傷として発信者情報開示請求を受けた投稿者(加害者)の対応もご覧ください。
参考資料
法令・公表資料は2026年10月3日に確認しました。個別の投稿についての結論は、内容や証拠、事業者の保有情報によって異なります。




