「たぬき掲示板」には、「V系初代たぬきの掲示板」「V系こたぬき掲示板」「V系老たぬき」「雑談たぬき」など複数の掲示板があります。たぬき掲示板に誹謗中傷が書き込まれた場合の対応として、たぬき掲示板に対する開示請求、削除請求について、専門弁護士が解説します。
「たぬき掲示板」とは
「たぬき掲示板」には、「V系初代たぬきの掲示板」「V系こたぬき掲示板」「V系老たぬき」「雑談たぬき」など複数の掲示板があります。
「V系」とは「ヴィジアル系」の略で、「ヴィジアル系」とは、日本のロックバンド・ミュージシャンの様式のひとつで、派手なメイクや髪型、ファッションを特徴とするバンドのことです。
「たぬき掲示板」はV系のバンギャ(バンドギャル=V系の音楽を好む女子)のコミュニティサービスです。
上記のとおり、「たぬき掲示板」はV系のバンギャのコミュニティサービスですが、「V系」以外の話題については、「雑談たぬき」で投稿することになっています。なお、「たぬき掲示板」は18歳未満の利用は禁止されており、中高生のバンギャは「V系こたぬき掲示板」を利用することになります。
「たぬき掲示板」への発信者情報開示請求
発信者情報開示請求は、仮処分(裁判手続き)による対応が原則となります。「たぬき掲示板」の管理者は、投稿者の氏名や住所を把握していないため、開示される発信者情報はIPアドレスやタイムスタンプのみとなります。
開示されたIPアドレスに基づいて、プロバイダ(携帯電話会社等)に氏名、住所等の発信者情報開示請求訴訟を行うことになります。
つまり、氏名、住所の開示までは2回の裁判が必要となります。
たぬピク事件(たぬきの掲示板)
たぬピクとは、
私が担当した事件ですが、「たぬピク事件」(東京地判平成31年2月28日・裁判所ウェブサイト)を紹介します。
「V系たぬきの掲示板」という匿名掲示板に画像を投稿するにあたり、「たぬピク」というアップローダーを利用するシステムになっており、「up@vpic(省略)」宛てに画像を添付したメールを送信すると、当該画像がインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信され、当該URLを掲示板に投稿すると、画像が表示されるシステムになっています。
本件では、投稿者が投稿した画像は、原告が著作権を有する画像でした。
投稿者が、当該URLを掲示板に投稿する行為は、URLを記載したに過ぎず、リンクを貼る行為なので、著作権侵害には該当しないとも思われます。しかし、裁判所は、上記「たぬピク」によりインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信された時間と、当該URLを掲示板に投稿した時間が近接していること、当該URLを第三者が投稿した可能性は低いことなどを理由として、著作権侵害を認めました。
リンクは著作権侵害とならない
リンクを貼る行為は、著作権侵害にはならないとされています。ですから、皆さんが、様々なリンクを貼って、SNSなどのインターネットを楽むことができるのです。
そうすると、たぬピクは画像URLを貼るだけですので、まさにリンクを貼る行為にすぎず、他人の著作権を侵害する画像がたぬきの掲示板に投稿されたとしても、著作権侵害とはならず、発信者情報開示請求が認められないか否かが問題となった事件が「たぬピク事件」(東京地判平成31年2月28日)です。この裁判は、私が担当した裁判ですが、著作権法でリンクの問題を検討する上では、よく取り上げられる裁判例です。
東京地裁は、画像URLが送信された日時と、掲示板に画像が投稿された日時がかなり近かったことから、たぬピクに画像を送信して画像URLを入手した人物と、画像URLを掲示板に投稿した人物は同一人物であると認められるとして、一般的な場合とは異なり、リンクを貼り付けた行為についても著作権侵害が成立すると判断しました。