2ちゃんねるに誹謗中傷が書き込まれた場合の対応として、2ちゃんねるに対する開示・削除請求する方法について紹介します。
「2ちゃんねる」の記事は殆ど「5ちゃんねる」のコピーである
「5ちゃんねる」の解説で説明したとおり、「2ちゃんねる」の内紛から「2ch.net」と「2ch.sc」と2つの「2ちゃんねる」が誕生し、「2ch.net」が「5ちゃんねる」と名前を変えて、「5ch.net」として運営されています。
このような経緯から、「2ちゃんねる」は「5ちゃんねる」をそのままコピーして運営されています。もっとも、「2ちゃんねる」でも閲覧者が自由に投稿できる仕組みになっていますので、「5ちゃんねる」には存在しない投稿が「2ちゃんねる」に投稿されていることもあります。
「2ちゃんねる」の運営会社は?
「2ちゃんねる」はシンガポールに所在する「PACKET MONSTER INC.」(パケットモンスター社)が運営しています。
パケットモンスター社は、もともとペーパーカンパニーで、実態のない会社なのですが、シンガポールにおいて会社登記がされており、代表者の登記もされていたことから、パケットモンスター社に対して開示請求、削除請求をすることができ、パケットモンスター社は裁判期日にはこれまで出頭してこなかったことから、無審尋(裁判手続きを開かないこと)の手続きで、仮処分決定がなされてきました。
しかし、2021年4月、パケットモンスター社の登記から代表者の氏名が消滅しました。そのため、従来のように、無審尋で仮処分決定を得るという方法は取れなくなりました。代表者の記載がない以上、パケットモンスター社を債務者とする仮処分決定を出すことはできないと裁判所が考えたためです。
そのため、現在の運用では、裁判所が弁護士の中から特別代理人を選任し、特別代理人が仮処分申立書の送達を受け、答弁書を提出し、双方審尋期日に出頭するという形になっています。なお、特別代理人の選任には費用がかかりますので、仮処分の申し立てをするにあたっては、数万円の予納金が必要となります。
「2ちゃんねる」で誹謗中傷を行なった投稿者を特定する方法
「5ちゃんねる」をコピーした投稿のログ情報は、「5ちゃんねる」が保有しており、「2ちゃんねる」に発信者情報開示請求をしても意味がありません。
「2ちゃんねる」に発信者情報開示請求をするのは、「2ちゃんねる」に投稿された記事である場合です。発信者情報開示請求は、東京地方裁判所に対する仮処分手続きとなります。
仮処分の審尋期日(裁判期日)には、特別代理人が出席し、答弁書が提出されます。その上で、裁判官が違法な投稿として発信者情報開示請求を認めるか否か判断します。もっとも、双方審尋前の裁判官面接の際に、仮処分命令が発令される方向か否かはある程度わかります。逆に、仮処分の発令が難しいような投稿があった場合、それらの投稿は取り下げるよう求められることもあります。
開示が認められた場合は、請求者の氏名、住所を墨塗りにして(裁判所の仮処分決定には、請求者の氏名、住所が記載されています)、「事務所@2ch掲示板」に掲示して依頼します。開示結果は、「2ちゃんねる」内で開示されます。
「2ちゃんねる」で誹謗中傷を受けた投稿記事を削除したい場合
開示請求同様、裁判所に対する仮処分申し立てを行い、削除を命じる仮処分決定が出た場合は、請求者の氏名、住所を墨塗りにして、「削除要請@2ch掲示板」に掲示して依頼します。
なお、発信者情報開示請求と異なり、仮処分の申し立てを行う裁判所は東京地方裁判所とは限らず、請求者の住所地を管轄する裁判所となります。例えば、札幌に居住している方は、札幌地方裁判所に仮処分を申し立てることになります。
仮に、発信者情報開示請求と削除請求のいずれも申し立てる場合は、開示請求は東京地方裁判所、削除請求は請求者の住所地を管轄する裁判所と別々に申し立てることになります。例えば、札幌に居住している方は、東京地方裁判所に開示請求、札幌地方裁判所に削除請求の仮処分を申し立てることになります。
「2ちゃんねる」への削除請求にあたっての注意
「2ちゃんねる」には、削除請求に関する厳格なルールが定められており、「削除ガイドライン」を踏まえて請求する必要があります。また、削除請求は一般に公開されるシステムになっていますので、削除請求をしていること自体がさらに誹謗中傷の対象になることもあります。
したがいまして、上記のとおり、任意削除による方法ではなく、仮処分による削除をお勧めします。