5ちゃんねるに誹謗中傷の書き込みが行われた場合の対応として行う、5ちゃんねるに対する開示請求、削除請求について解説します。
「5ちゃんねる」とは
「2ちゃんねる」(2ch.net)を管理していたJim Watokins氏がLoki Technology,Inc.に事業譲渡を行い、掲示板の名称も「2ちゃんねる」から「5ちゃんねる」に変更されました。
「2ちゃんねる」には、「2ch.net」と「2ch.sc」の2つあり、とても紛らわしくなっていました。もともと「2ちゃんねる」は、西村博之氏が運営していたのですが、名義上「2ちゃんねる」を管理していたJim Watokins氏と内紛が生じ、もともと存在していた「2ch.net」はJim Watokins氏の下で、フィリピン法人である「Race Queen,Ink」が管理し、「2ch.sc」は西村氏の下で、シンガポール法人である「PACKET MONSTER INC.」が管理しています。なお、上記のとおり、「5ちゃんねる」を管理しているのはフィリピン法人であるLoki Technology,Inc.です。
現在では、「5ちゃんねる」への名称変更により、「2ちゃんねる」が複数存在するという紛らわしい状況は回避されましたが、掲示板の構造自体が似通っていますので、紛らわしさは変わらないかもしれません。
「5ちゃんねる」で誹謗中傷を行った投稿者を特定する方法
メールによって、発信者情報の開示を請求します。開示結果はメールによって送られてきます。
ただし、管理人が任意の開示には応じないこともありますので、仮処分決定を得る必要もあります。なお、「5ちゃんねる」は、仮処分の審尋期日(裁判期日)には出頭しません。管轄裁判所は、東京地方裁判所となります。
インターネット利用者が急増した結果、IPアドレスが不足していることから、利用者の多い経由プロバイダ(NTTドコモ、au、ソフトバンクなど)では、複数の利用者に同一のIPアドレスを割り振っています。これをIPアドレスの枯渇化といいます。
かつては、同一時間帯に同一のIPアドレスを使用している利用者は一人に限定されていたため、コンテンツプロバイダ(5ちゃんねる)からIPアドレスとタイムスタンプ(投稿日時)を開示してもらえれば、投稿者が一人に特定できるのが通常でした。
しかし、同一のIPアドレスを使用している利用者が多数存在していることから、IPアドレスとタイムスタンプ(投稿日時)だけでは、発信者(投稿者)を一人に特定するのが難しい状況になりました。そこで、経由プロバイダ側は、利用者が接続したサイトのIPアドレス(5ちゃんねるでの投稿を開示するのであれば、5ちゃんねるのサーバーのIPアドレスのことで、このIPアドレスを「接続先IPアドレス」といいます)を含めた3つの情報で、発信者(投稿者)を一人に絞り込む方法をとっています。
当初5ちゃんねるは、接続先IPアドレスを保存していないとして、開示対象には含んでおらず、5ちゃんねるの開示は難しい場合もありました。しかし、最近は、5ちゃんねるは接続先IPアドレスを開示するようになりましたので、以前に比べて5ちゃんねるの開示請求はやりやすくなりました。
「5ちゃんねる」で誹謗中傷を受けた投稿を削除したい場合
メールによって削除請求をします。
なお、削除ガイドラインにしたがって、削除請求する必要があります。かなり複雑ですので、削除請求に慣れている弁護士に依頼した方が楽かもしれません。
なお、逮捕・前科に関する投稿記事の削除については、公益性、公共性の観点から、容易には削除されるものではありません。①逮捕された時期からどの程度期間が経過しているか、②どのような犯罪を犯したかとう罪質、③逮捕された人物の地位、犯罪における役割の大きさ、④どのような刑事処分を受けたか(不起訴、起訴猶予、執行猶予、罰金、無罪など)、⑤現在の生活状況(犯罪を犯さずにまじめに生活をしているか)などの諸事情により、削除の可否が変わります。必要に応じて、不起訴処分通知書、示談書などの資料も添付することが必要となります。
任意の削除に応じてもらえない場合は、仮処分決定を得て、決定書をメールで送付することになります。なお、管轄裁判所は、申立人の居住する住所を管轄する地方裁判所です。例えば、札幌在住の人が申し立てる場合は、札幌地方裁判所に申し立てることになります。
もっとも、5ちゃんねるを管理しているLoki Technology,Inc.はフィリピン法人であり、仮処分申立書の送達に半年以上の期間を要することから、仮処分による削除申し立てでは、迅速な解決は図れないことになることに注意が必要です。