Googleマップ・Googleプレイス(クチコミ)に誹謗中傷・風評被害にあたる書き込みが行われた場合の対応について紹介します。
Googleが保有している発信者情報は、ログイン時IPアドレスとタイムスタンプとなります。Googleが任意に発信者情報を開示することはありません。Googleが任意に開示請求に応じることはないことから、裁判所に仮処分命令の申立てを行います。
Google のクチコミに関するポリシーに違反するクチコミは、「不適切なクチコミを報告する」の手続にしたがって、Googleに報告できます。しかし、報告によってGoogleが削除するケースはあまりないようです。なお、クチコミを書いた本人であれば、「クチコミを編集または削除する」にしたがって、削除することはできます。
Googleマップのクチコミの発信者情報開示請求(投稿者を特定するには)
Googleが保有している発信者情報は、ログイン時IPアドレスとタイムスタンプとなります。
しかし、上記のとおり、Googleが任意に発信者情報を開示することはありません。Googleが任意に開示請求に応じることはないことから、裁判所に仮処分命令の申立てを行います。なお、管轄裁判所は、東京地方裁判所になります。
Googleからログイン時IPアドレスとタイムスタンプが開示された後、経由プロバイダ(携帯電話会社など)が判明しますので(なお、Googleからは投稿直前のログイン情報が開示されます)、各プロバイダに投稿者(契約者)の氏名、住所などの開示を請求します。
具体的な手続きは、本ブログの発信者情報開示請求とプロバイダ責任制限法をご覧ください。
Googleから投稿者の電話番号の開示請求
Googleアカウントには、登録時に電話番号が登録されている可能性があります。特に最近では、GoogleなどのSNS事業者は、第三者によるアカウントへの不正アクセスを防止するため、2段階認証を推奨しており、電話番号の登録を求めています。
電話番号が登録されていないならば仕方がありませんが、開示対象のアカウントに電話番号が登録されているかもしれませんので、Googleに対する開示請求にあたっては、ログイン時のIPアドレスの開示のみではなく、電話番号、電子メールアドレスの開示も併せて行っておくのが良いと思います。ただし、電話番号の登録がなく、電子メールアドレスのみの登録だった場合、登録されている電子メールアドレスはgmailなどのフリーメールであることが殆どで、投稿者の特定には至らない可能性があります。
電話番号が開示された場合は、弁護士会照会によって、投稿者の特定を行うことになります。
URLの記載された証拠保全
Googleマップのクチコミの発信者情報を行うには、対象となるクチコミのURLが印字された証拠が必要となります。通常は、クチコミをPDFで保存するときに、URLも併せて表示する設定で保存すれば保存自体は短時間で済みます。ただ、パソコンではなく、スマホでスクリーンショットを撮るような場合は、URLが表示されていないため、証拠保全が難しい場合もあります。保存が難しいと思ったら、専門の弁護士に相談した方が良いかもしれません。
証拠の保存方法については、以下の記事もご参照ください。
Googleマップのクチコミを削除するには
Google のクチコミに関するポリシーに違反するクチコミは、「不適切なクチコミを報告する」の手続にしたがって、Googleに報告できます。
しかし、上記報告によってGoogleが削除するケースはあまりないようです。
なお、クチコミを書いた本人であれば、「クチコミを編集または削除する」にしたがって、削除することはできます。
上記方法によって、クチコミの削除が実現しなかった場合、裁判所による仮処分決定がなされれば、Googleは削除に応じる姿勢をとっています。なお、申立てをする裁判所は、原則的には日本における代表者が置かれている東京23区を管轄する東京地方裁判所となります。
Googleにクチコミを削除してもらう方法
Googleは、簡単にはクチコミの削除に応じることはなく、裁判所から「削除しなさい」と命じられなければ削除を行いません。これは、Googleがアメリカ企業であり、表現の自由を尊重する文化が強いからであり、また、プラットフォームであるGoogleは真実は何かは分からず、投稿者の意思に反して、クチコミを削除すべきではないとの考えが根底にあります。
それに加えて、クチコミ情報は、消費者の立場から有益な情報であり、良い評価も悪い評価も、消費者が企業のサービスや商品を選択する上で不可欠な情報であり、企業にとって悪い評価(クチコミ)のみを削除すると、良い評価しか残らず、消費者にとって不利益であることも主張されます。
上記のようなGoogleの考え方から、仮処分手続きによって、クチコミの削除を求めるにしても、陳述書(書面)によって、「クチコミに書かれた内容は事実ではない」と説明するだけではなく、事実ではないことが信用できる程度の資料(証拠)も提出する必要があります。どのような資料があればよいかについては、事案ごとに異なりますので、専門の弁護士の指示に従うことになります。
もっとも、「社長にセクハラされた」などのクチコミは、陳述書以外に事実でないことを証明することは困難ですので、陳述書のみで削除命令が発令されることもあります。
Googleに対する検索結果表示削除請求
誹謗中傷記事が多数にのぼる場合、各プロバイダに対する削除請求では到底対応できないため、Googleの検索結果から表示されないようにすることで、誹謗中傷を防止する対策が考えられます。例えば、「自分の氏名 逮捕」で検索すると、自分の過去の逮捕歴が記載された記事が多数検索されるような場合、就職が困難になり、社会生活においても弊害が生じますので、それを食い止める必要があるわけです。
上記のようなインターネット検索サイトに表示される個人情報を削除する権利は、「忘れられる権利」と言われ、2014年5月13日、欧州司法裁判所もかかる権利を肯定したと評価されています。日本でも、明確に「忘れられる権利」が確立したとは言えませんが、検索結果の削除を認める裁判例が出てきています。検索結果の削除が認められるか否かは、検索結果から削除される利益と、表現の自由、報道の自由、国民の知る権利等を総合考慮して判断されることになります。
なお、Googleは外国企業であり、外国企業を相手取った裁判は、時間と費用が相当かかります。そこで、事案にもよりますが、まずは任意の交渉で検索結果の削除を求め、それが難しいようなら、仮処分や本訴請求を行うという手順も有効だと思います。