X(旧Twitter)で誹謗中傷の被害を受けた方のために、専門弁護士が開示請求、削除請求について解説するページです。X(旧Twitter)は、インターネットで閲覧可能な140字以内の短文「ポスト」を共有するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)です。利用者が最も多いSNSだと思われますが、誹謗中傷も多発しています。Xで投稿されるポストは短い文章が多いですが、有料のX Premiumに登録すれば、基本的に字数制限を気にせずにポストすることができます。
X(旧Twitter)の利用者像
X(旧Twitter)の利用者像は非常に多様ですが、一般的には以下のような特徴があります。
- 年齢層:若い人々が多い傾向がありますが、中高年層も増加しています。
- 職業:ジャーナリスト、マーケター、政治家、専門家など多岐にわたります。
- 興味・関心:ニュース、ポップカルチャー、専門分野、政治、スポーツなど、多種多様なトピックに興味を持つ人々がいます。
地域や言語、文化によっても利用者像は異なる可能性があります。ビジネスアカウントやブランドも活発に活動しており、個人ユーザーと異なる目的でプラットフォームを利用しています。
X(旧Twitter)の問題点
X(旧Twitter)にはいくつかの問題点が指摘されています。例えば、ハラスメントやトロール行為が容易に行える環境があること、フェイクニュースや誤情報が広がりやすいことなどです。また、短い文字数制限により、複雑な話題が単純化されがちで、誤解を招く可能性もあります。プライバシーの懸念や、アルゴリズムによるフィルターバブルの形成も問題とされています。
X(旧Twitter)での被害にはいくつかの典型的なケースがあります。
- オンラインハラスメント:一般ユーザーや有名人が誹謗中傷や嫌がらせを受けることがあります。
- ドキシング(個人の識別可能な情報(氏名、住所、電話番号など)をインターネット上で公開する行為):個人情報が公開され、リアルライフでの嫌がらせや危害を被る場合がある。
- スウォットィング:偽の緊急通報により警察が出動する悪戯行為。
- 誤情報の拡散:フェイクニュースや誤情報が拡散され、社会や個人に悪影響を及ぼす場合があります。
- アカウント乗っ取り:セキュリティが弱いと、第三者によってアカウントが乗っ取られる可能性があります。
これらはTwitter特有の問題だけでなく、多くのソーシャルメディアプラットフォームで共通して見られる被害ですが、Twitterのリアルタイム性と拡散力がこれらの問題を悪化させる場合があります。
X(旧Twitter)の有用性
X(旧Twitter)は多くの面で有用です。以下はいくつかの例です。
- リアルタイム情報:速報性の高いニュースやイベントの最新情報をリアルタイムで得られます。
- 専門家の意見:各分野の専門家や有識者が自分の考えを共有しているため、専門的な情報や洞察が手に入ります。
- ネットワーキング:同じ興味や専門分野を持つ人々と繋がることができ、仕事や学びに役立つ場合があります。
- ブランドや製品のプロモーション:ビジネスや個々のプロジェクトを広く知らせる手段としても有効です。
- ソーシャルプルーフ:話題になっている事柄やトレンドを把握するためにも役立ちます。
これらは一例であり、X(旧Twitter)の用途はユーザーの目的や興味によってさまざまです。
X(旧Twitter)で誹謗中傷を受けた場合の解決方法
X(旧Twitter)は全世界の人たちに情報発信したり、情報共有をするには適したSNSですが、中には虚偽の情報を流されたり、一方的に誹謗中傷を受けるという被害も生じます。そのような被害を受けた場合、対処方法としては、①誹謗中傷している相手を特定して誹謗中傷行為を止めさせる方法、②虚偽が書かれたツイートを削除する方法があります。
いずれの方法によるにしても、X(旧Twitter)社は、原則として裁判所の命令がないと、発信者の特定につながるような個人情報(IPアドレス、電話番号、メールアドレス)を開示することはありません。X(旧Twitter)社は、発信者の表現の自由にも配慮しており、被害者と投稿者のいずれにも加担することなく、あくまで中立の立場でSNSを運営しているので、X(旧Twitter)社が独自にツイートの違法性を判断することは基本的にはしないということです。
そのため、X(旧Twitter)での誹謗中傷が問題となる場合には、X(旧Twitter)社に通報してその対応を待つのは現実的ではなく、スクリーンショットなどで速やかに証拠を確保した上で、裁判手続きを行うことが必要となります。なお、X(旧Twitter)社を相手にする裁判は、日頃ニュースなどで目にする裁判ではなく、仮処分や非訟手続等非公開で行われる裁判になりますので、その実態はあまりよく知られていないと思います。弁護士であっても、X(旧Twitter)への開示請求等を経験したことがない場合は、具体的な進行方法については、よく分かっていないのが実情です。
X(旧Twitter)で誹謗中傷を行った投稿者を特定する方法
X(旧Twitter)における誹謗中傷のご相談も多数寄せられております。
X(旧Twitter)はアメリカ法人ですので、発信者情報開示(IPアドレスの開示)請求は、東京地方裁判所に申し立てることになります。但し、申立書や証拠を英訳する必要があるのと、海外法人への呼び出しという性質上、国内のプロバイダに対する発信者情報開示請求に比べれば、やや時間を要していました。
しかし、この点に関しては、2022年9月にTwitter,Incの日本における登記が完了し、日本国内に代表者が置かれましたので、送達(送付)に関しては国内のプロバイダと同様の扱いとなり、時間的、費用的な問題はある程度解消されました。
X(旧Twitter)からログイン時IPアドレスとタイムスタンプが開示された後、アクセスプロバイダ(携帯電話会社など)が判明しますので(複数のプロバイダである可能性もあります)、各プロバイダに投稿者(契約者)の氏名、住所などの開示を請求します。
具体的な手続きは、本ブログの発信者情報開示請求をご覧ください。
X(旧Twitter)で誹謗中傷を受けたツイートを削除したい場合
X(旧Twitter)には、多数の誹謗中傷記事が書込まれています。フォームから削除依頼をすることは可能ですが、X(旧Twitter)は簡単には削除に応じてくれない状況です。X(旧Twitter)社はアメリカ企業であり、表現の自由を重視する考えを持っており、被害者が誹謗中傷を受けたと感じていたとしても、簡単に削除依頼に応じることはありません。多くの方が、問題のあるポストに対して、X(旧Twitter)社に通報しても何らの対応もされないことを経験しているかもしれませんが、それは、表現の自由を尊重しようとするX(旧Twitter)社の考えからです。そのため、問題となっているポストを消去することは容易なことではありません。
しかし、X(旧Twitter)社は、裁判所による仮処分決定がなされれば、ポスト削除に応じる体制をとっています。もっとも、X(旧Twitter)社は、仮処分手続において、削除に対しては厳格な姿勢を示しますので、削除に値するような深刻な被害、問題のある投稿であることの十分な説明は求められます。そのため、X(旧Twitter)でのツイートの削除を求める場合は、専門の弁護士に相談のうえ、十分な準備を整えたうえで、削除の申立てをする必要があります。
X(旧Twitter)はアカウントやツイートを完全に削除しているわけではないことに注意が必要
時折、X(旧Twitter)アカウントが凍結されたというポストを目にすることがあります。暴力的なポストや差別的なポストが繰り返されているアカウントについては、X(旧Twitter)社によって、アカウントが凍結されることがあります。また、アカウントの凍結に至らない場合でも、ツイートが非表示にされることもあります。
このように、アカウントやポストを完全に削除できるのは、アカウントを管理している者だけであり、プラットフォームであるX(旧Twitter)社であったとしても、アカウントを凍結するなどいわゆる「利用停止」にするにとどまり、削除はアカウント管理者のみが行う仕組みになっています。
X(旧Twitter)社がアカウントを凍結したり、問題のあるツイートを非表示にするならば、誹謗中傷を内容とするポストが第三者に見えなくなるという目的は達せられます。
しかし、上記の裁判所からの仮処分命令に基づいてポストを削除するのは、日本国内で非表示にするという対応になっています。そのため、海外ではポストの表示が続いている可能性があり、それをGoogleの検索エンジンが拾ってしまい、Googleの検索結果として表示されてしまうこともあります。このような場合は、Googleに対しても検索結果の削除を求める必要があります。
単発のポストであればGoogle検索に残ることはあまりありませんが、リポストしていた場合などは、関連付けられて検索結果に表示されるようです。
X(旧Twitter)社に対する削除仮処分が出ている場合は、Googleも検索結果の削除に柔軟に対応することはありますが、特に画像を添付したツイートの場合は、画像の特定や検索ワードの設定等で削除請求はかなり面倒です。
発信者情報開示請求のみでもアカウントが凍結されることがある
上記のとおり、発信者情報開示請求は東京地方裁判所が管轄裁判所となり、削除請求は被害者の居住地(会社の場合は本店所在地)を管轄する裁判所又は東京地方裁判所となりますが、通常は、開示請求も削除請求も東京地方裁判所に申し立てることになります。しかし、開示請求と削除請求の手続きは別個の手続きですので、2回に分けて申立てをする必要があります。
しかし、ケースによっては、開示請求が認められた場合には、X(旧Twitter)社の判断で、利用規約に反するとして、アカウントが凍結されるなどして閲覧できなくなることもあります。あくまでもX(旧Twitter)社の判断ですので、申立てをする側からは、何とも断定できないところですが、アカウントそのものに問題があると判断される場合は、開示請求のみで削除が実現できる事案もあります。
X(旧Twitter)からの電話番号・メールアドレス・IPアドレスの開示
X(旧Twitter)アカウントを作成する際は、原則として電話番号・メールアドレスを登録する必要があります。そのため、対象アカウントに電話番号が登録されているケースがありますので、X(旧Twitter)社にはアカウントに登録されている電話番号の開示を求めることになります。なお、メールアドレスの開示を求めることも可能ですが、フリーメールを登録している場合には、投稿者の特定に至る可能性は高くありません。
IPアドレスが開示された場合、次はアクセスプロバイダに対して発信者(契約者)の氏名、住所等の個人情報の開示を求める発信者情報開示請求を行うことになります。アクセスプロバイダの場合も、顧客の個人情報を開示することになるので、簡単には応じることはなく、裁判所からの開示決定が発令されてはじめて契約者情報を開示する運用となっています。