ネットに残る逮捕記事は削除できる?就職や生活への影響と対処法

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弁護士大熊 裕司
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自分の名前を検索すると、過去の逮捕報道の記事が出てきてしまう… そんな状況に悩んでいませんか?逮捕時の実名記事がインターネット上に残っていると、就職活動や日常生活に大きな支障が出ることがあります​。この記事では、逮捕記事が与える影響と、ネット上から逮捕記事を削除する具体的な手続きについて、実際の体験談を交えながら分かりやすく解説します。

逮捕記事が残ることで起きる影響

逮捕報道が消えずに残ると、社会復帰の大きな障害になり得ます。 実名報道された逮捕記事がネット上に半永久的に残れば、不特定多数の人に逮捕歴を知られてしまい​、以下のような深刻な影響が生じます。

  • 就職や転職への悪影響: 逮捕報道により職場を退職せざるを得なくなるケースがあります​。

  • 社会生活での偏見・風評被害: たとえ冤罪で不起訴になっても、ネット上に記事が残り続ける限り「犯罪者扱い」されてしまうケースは少なくありません​。

  • 精神的なダメージ: 自分の名前で検索すれば逮捕記事が出てしまう状態は、大きなストレスです。「もう人生が終わった…」と感じて外出するのも怖くなり、名前を書くことさえ億劫になる人もいます。

このように逮捕記事が消えずに残ると、仕事からプライベートまで幅広く悪影響が及びます。しかし裏を返せば、逮捕記事を削除できればこうした被害を軽減できる可能性があります。次章では「逮捕記事は本当に削除できるのか?」について見ていきましょう。

逮捕記事は削除できるのか?

結論から言えば、条件次第ではネット上の逮捕記事を削除できるケースもあります。 実名報道の逮捕記事はプライバシー権の侵害として削除を請求できる余地がありますが、一方で報道には公共の利益(公益性)があるため、表現の自由も尊重されます​。そのため削除できるかどうかはプライバシー保護の必要性報道の公益性を比較衡量して判断され、ケースバイケースです​。一般的に、次のような場合には「逮捕記事を削除すべき」という判断がなされやすくなります。

  • 嫌疑不十分・不起訴処分だった場合: 逮捕後、嫌疑なしで不起訴となったようなケースでは、記事削除が認められる傾向があります​。

  • 罪を犯していない、または軽微な事件: 重大事件ではなく社会的関心が高くない場合も、時間の経過とともに逮捕記事を残す公益性が薄れ、削除が認められやすくなります​。

  • 記事内容が誤報・過剰な場合: 記事に事実と異なる内容が含まれている場合や、逮捕時点の速報で後に状況が変わった場合も、削除・訂正の要求が正当化されやすいでしょう。あるニュースサイトの記事に「容疑者が○○したとみられる」といった憶測や完全な誤報が含まれていました​。

一方で記事削除が難しいケースもあります。特に起訴され有罪が確定した事件や社会的影響の大きい犯罪の場合、逮捕記事の公益性が高いと見なされ、削除は簡単には認められません。実際、2017年1月31日の最高裁決定では、児童買春で逮捕され罰金刑を受けた男性が検索結果の削除を求めた仮処分申立てに対し、「プライバシー保護が明らかに優越する場合にのみ削除が認められる」との厳しい基準を示し、削除を認めませんでした​。この時最高裁が示した判断要素は、(1)事実の性質・内容、(2)被害の程度、(3)当人の社会的地位、(4)記事の目的・意義、(5)社会的状況、(6)事実記載の必要性、などです​要するに「社会にとってその情報を残す意義が大きいか」が問われるわけです。

しかし近年、削除要請を取り巻く環境にも変化が出始めています。2022年6月24日には最高裁がTwitter上の逮捕事実に関する投稿の削除を命じる判決を出しました​。この判決では「速報的な投稿が長期間残り続けることは想定されていない」という点などが考慮され、プライバシー保護が優先されています​。
専門家は「この判例以降、逮捕記事の削除請求が認められるケースが増えるだろう」と指摘しています​。つまり、ネット上の逮捕記事についても“忘れられる権利”に近い考え方が徐々に浸透しつつあるのです。

以上を踏まえ、「自分の逮捕記事は消せる可能性があるのか?」を判断するには、事件の性質やその後の経過、現在の社会的評価などを総合的に見る必要があります。不起訴や無罪であれば強く交渉できる余地がありますし、たとえ有罪でも時間の経過や更生の事実によっては削除・非表示を求める道がゼロではありません。では、具体的に削除を実現するには何をすれば良いのでしょうか?次の章で具体的な手順を解説します。

逮捕記事を削除する具体的な手続き

ネット上の逮捕記事を削除するための基本的なステップを、ケース別に説明します。状況によって取るべき対応が異なるため、順を追って確認しましょう​。

  1. 掲載サイトの種類を確認する: まず、あなたの逮捕記事が「どのサイト」に掲載されているかを洗い出しましょう。主要な報道機関のニュースサイトなのか、ニュースを転載した個人ブログ・まとめサイトなのか、あるいは5chなどの匿名掲示板なのかによって、適切な削除依頼先が異なります​。

  2. ニュースサイトに削除を申し入れる: オリジナルのニュース記事が掲載されている報道機関のサイトに対して、記事削除の依頼を行います。多くの場合、各社のウェブサイトに設置されているお問い合わせフォームや、編集部宛のメール・電話窓口があります​。

  3. ブログ・まとめサイトへの削除依頼: ニュース記事を転載しているブログサイトやキュレーションサイトにあなたの逮捕記事が残っている場合、そのサイトの運営者にも削除を依頼します​。

  4. 検索エンジンの検索結果を削除(非表示)する: 記事そのものを削除できなくても、GoogleやYahooなど検索エンジンの結果からあなたの逮捕記事を除外してもらうことも重要です。検索事業者各社は「検索結果の削除依頼用フォーム」を設けており、そこから申請できます​。

  5. SNSや掲示板への対応: 逮捕報道はニュースサイトだけでなく、SNSや掲示板で拡散されていることもあります。TwitterやFacebook上に実名や逮捕内容が出回っているなら、各プラットフォームの通報機能を使って削除依頼を出しましょう。プライバシー侵害や嫌がらせとして報告すれば、運営側が投稿を削除してくれる場合があります。匿名掲示板(5ちゃんねる等)にスレッドが立っている場合は、掲示板内の削除依頼フォームやガイドラインに従って申請します​。

  6. 法的措置を検討する: 上記の任意の依頼で埒が明かない場合、裁判所を通じた法的手段も選択肢に入ります。具体的には、記事や検索結果の削除を求める仮処分(緊急的な差止め命令)を裁判所に申し立てる方法です​。

以上が一般的な削除までの流れです。状況によって適切な手段を組み合わせ、できることは全て試すことが大切です。一度の依頼でだめでも、証拠や理論武装を強化して再度依頼すれば応じてもらえるケースもあります。次に、弁護士など専門家に依頼する場合のメリットや注意点を見てみましょう。

専門家に依頼するメリットと注意点

自分一人で削除交渉を行うことも可能ですが、専門の弁護士に依頼することで成功率が上がる場合があります。ここでは弁護士等に依頼するメリットと、依頼時の注意点を紹介します。

  • 法的根拠に基づいた交渉: 弁護士は削除を求める法的な根拠(プライバシー権侵害や名誉毀損の成立など)を整理し、的確にサイト運営者や検索事業者に伝えることができます​。

  • 迅速かつ適切な手続き: 弁護士に依頼すれば、サイトへの通知文書作成や送信防止措置の申請、仮処分の申し立てなど専門的な手続きをスムーズに進めてもらえます​。

  • 精神的負担の軽減: 自分で各所に連絡し交渉するのは大きなストレスを伴います。専門家に任せることで精神的な負担を軽くし、本来やるべき就職活動や日常生活の立て直しに専念できるというメリットもあります。

  • 費用対効果の判断: 弁護士費用は決して安くありませんが、状況によっては払う価値がある投資になります。

  • 悪質な削除代行業者に注意: ネット上には「逮捕記事を消します」「逆SEOで検索結果に出ないようにします」などと宣伝する民間の業者も存在します。しかし報酬を得て記事削除交渉を行えるのは弁護士か本人のみであり、弁護士資格のない業者が削除交渉を代行するのは違法(非弁行為)です​。

削除要請をめぐる最新の動向

ネット上の個人情報削除については、近年少しずつ環境が変わってきています。ここでは、逮捕記事削除に関連する最新のトピックを押さえておきましょう。

  • 裁判所の判断基準の変化: 前述の通り、最高裁は2017年に厳格な基準を示しましたが、その後も下級審で個別事情を考慮した判断が出ています。2019年の札幌地裁判決では、不起訴処分となった男性の逮捕記事について、検索結果からの削除が命じられました​。

  • 「忘れられる権利」の議論: ヨーロッパで認められている「忘れられる権利」(一定の条件下で個人データの削除を求める権利)について、日本でも注目が集まっています​。

  • 報道各社の対応: ニュースサイト側の姿勢にも変化が見られます。不起訴や無罪が判明した場合、自主的に記事を取り下げたり訂正記事を出したりする媒体も増えてきています

  • プロバイダ責任制限法の改正: 2022年にはプロバイダ責任制限法が改正され、権利侵害情報の発信者情報開示請求が迅速化されるなどの措置が取られました。削除そのものとは異なりますが、ネット上の人権侵害への対処を強化する流れの一環です。この改正により、例えば匿名掲示板で誹謗中傷を書き込んだ人物を特定しやすくなりました。将来的には、逮捕記事の無断転載サイトの運営者を突き止めて法的責任を問う、といった対応も取りやすくなるかもしれません。

総じて、逮捕記事の削除を取り巻く状況は少しずつ好転しつつあると言えるでしょう。もちろん簡単に消せる時代になったわけではありませんが、「泣き寝入りせず訴えれば認められる可能性がある」という事例が増えているのは心強い変化です。

まとめ:あきらめずに前向きな対策を

逮捕記事がネットに残ってしまった場合でも、あきらめる必要はありません。 適切な手順を踏めば、記事の削除や検索結果からの非表示といった対策を取ることは可能です。​実際に、長年「もう消せない」と諦めていた人が専門家の力を借りて対策を行ったところ、わずか一週間ほどで検索結果から実名報道の記事がみるみる消えていったという事例もあります​。完全にネットから痕跡をなくすことは容易ではありませんが、手を打てば状況は確実に改善します。

最後に、逮捕記事に悩む方へのアドバイスです。

  • できる範囲で削除依頼を出そう: 本記事で紹介した方法を参考に、自分でできるところから行動してください。記事が消えればそれに越したことはありませんし、たとえ消えなくても「削除を求めた」という事実が今後の交渉材料になることもあります。

  • 信頼できる第三者に相談を: 一人で抱え込まず、弁護士や、同じ境遇の人を支援する団体・サービスを頼ってみましょう。専門家は法律面で、支援団体はメンタル面や就職活動で力になってくれます。​

  • 就職活動では誠実さを心がける: 仮に逮捕記事が残っている場合、面接などで自分から事情を説明するのも一つの手です。「隠して入社したが後から記事が見つかり退職せざるを得なくなった」というケースもあるため​、社会復帰を目指す上で、インターネット上の情報とどう向き合うかは避けて通れない課題です。幸い、この記事で取り上げたように対処法は存在し、実際に動き出した人は前進しています。あなたもぜひ勇気を出して一歩踏み出し、必要な手続きを行ってみてください。人生を取り戻すために、今できる対策を講じていきましょう。

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ネット書込み削除、書込み者特定の費用

投稿記事の任意削除

基本料金:5万5000円~
※サイトや削除件数によって料金が異なります。

投稿記事削除の仮処分

【着手金】 22万円~
【報酬金】0円

発信者情報開示命令申立(書込み者の氏名、住所の開示)

【着手金】44万円~
【報酬金】0円

書込み者に対する損害賠償請求

【示談交渉の場合】
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・報酬金:17.6%

【訴訟の場合】
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