
はじめに
繁華街のネオンがきらめく一方、ホストクラブでの過剰な売掛(ツケ)と女性客の債務地獄、さらには売春や AV 出演の強要――こうした実態が社会問題化したのを受け、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下、風営法) が 2025 年6月 28 日、一部罰則条項は同年 12 月 28 日にかけて大幅改正されました。今回の改正は戦後最大級とも評され、①ホスト・キャバクラ等への本営(本命営業) 禁止、②売掛金回収を口実とする本番行為強要 の罰則化、③スカウトバック 全面禁止、④罰金最高3億円 への引上げ、⑤行政処分逃れを許さない欠格事由拡大、⑥広告規制通達 という「六重の網」で悪質営業を封じ込める内容です。
1 改正の背景ーなぜ法改正が必要だったのか
1-1 ホストクラブ被害の深刻化
警察庁統計によれば、ホスト被害相談は 2021 年 2,044 件→2024 年 2,776 件と右肩上がり。
典型パターンは、
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ホストが恋人さながらの甘い言葉で信頼を獲得(色恋営業)。
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高額シャンパンや周年イベントを煽り、支払能力を超える売掛を負わせる。
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「払えないなら仕事を紹介する」として風俗店就労や売春を強要、本番行為をさせる。
この三段構えが「借金型性搾取ビジネス」と批判され、国会でも与野党が被害根絶を求める声を上げました。
1-2 従来法の限界
色恋営業自体は詐欺罪や脅迫罪で立件しづらく、売掛取立ての過程で暴力が伴わなければ刑事摘発が困難。そこで行政処分で未然にストップを掛ける規定が急務となりました。
2 キーワード整理:「本営」と「本番行為の要求」は全くの別物
改正風営法を正しく理解する上で、最も重要なのが「本営(ほんえい)」と「本番行為の要求」という2つのキーワードを明確に区別することです。この2つは、行為の性質も、適用される法律も、そして違反した場合の罰則も全く異なります。両者を混同すると、実務上の判断を大きく誤る原因となるため、ここでしっかりと整理しておきましょう。
1. 「本営(本命営業)」とは? ― 恋愛感情を利用した【行政処分の対象】
まず「本営」とは、一言で言えば「恋愛感情を利用したマーケティング手法」です。
具体的には、ホストなどの従業員が、客が自分に抱いている恋愛感情や特別な好意につけ込み、「君は本命だ」と誤信させるなどして、その客の支払能力を超えるような高額な飲食をさせる行為を指します。
今回の改正で、この行為は風営法第18条の3で新たに規制されました。ただし、これはあくまで店の「遵守事項」という位置づけです。そのため、違反しても従業員が直ちに逮捕される刑事罰の対象とはなりません。その代わり、店に対して公安委員会から営業停止や許可取消しといった重い「行政処分」が下されます。
2. 「本番行為の要求」とは? ー売掛金回収のための【刑事罰の対象】
一方、「本番行為の要求」は、マーケティング手法などではなく、紛れもない「犯罪行為」です。
これは、高額な売掛(ツケ)を支払えない客に対し、その債権を回収する手段として、売春(性的な行為)や性風俗店での労働などを要求・強要する行為を指します。
この行為は、風営法第22条の2で「禁止行為」として明確に定められています。違反した場合、要求した本人が「6か月以下の懲役または100万円以下の罰金」という刑事罰の対象となり、逮捕・処罰される可能性があります。
【重要ポイントのまとめ】
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本営 = 恋愛感情を利用した営業手法。店の行政処分の対象。
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本番行為の要求 = 売掛金回収を目的とした犯罪行為。個人の刑事罰の対象。
このように、「本営」は飲み代の稼ぎ方(営業方法)の問題であり、「本番行為の要求」はツケの取り立て方(債権回収)の問題です。この違いを正確に理解することが、改正風営法を遵守する上での第一歩となります。
3 改正風営法「六重の網」を読み解く
3-1 【改正の核心】恋愛感情につけ込む「本営」禁止(新設18条の3)を徹底解剖
今回の改正で最も現場への影響が大きく、事業者が絶対に見過ごせないのが、この「本営(本命営業)」を直接規制する新条文(風営法第18条の3)です。これまで詐欺罪などでの立件が難しかった「色恋営業」による被害を防ぐため、行政処分という形で強力な網がかけられます。
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対象となる営業: ホストクラブ、キャバクラはもちろん、接待を伴うガールズバーやコンセプトカフェ、スナック等(風営法2条1項1号営業)
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施行日: 2025年6月28日
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法的性格: これは「遵守事項」であり、違反そのものが直ちに刑事罰(懲役や罰金)になるわけではありません。しかし、公安委員会による指示・営業停止(最長6か月)・許可取消しという重い行政処分の対象となります。この命令に従わない場合は、別途罰則が科されます。
【ステップ1】何が禁止されるのか?条文を3つのポイントで理解する
新設された第18条の3が禁止する行為は、大きく分けて以下の3つです。
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料金に関する虚偽・誤認の説明
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「本当は50万円だけど君だけ特別価格」といった虚偽の説明や、会計時に不当なサービス料を上乗せするなどの行為。
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恋愛感情を利用し、客を困惑させて高額な飲食をさせる行為
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これが「本営」規制の核心です。法律は、客が「キャストも自分に好意がある」と誤信している状況を悪用し、以下のいずれかの方法で客を心理的に困惑させ、高額な注文をさせることを禁じています。
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イ)関係の破綻をほのめかす:「このシャンパンを入れてくれないなら、もう会わない」
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ロ)従業員の不利益を盾にする:「助けてくれないと、僕はお店をクビになる」
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注文前の「早開け」など既成事実での請求
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客が明確に注文する前にボトルを開栓し、「もう開けちゃったから」と支払いを強要する行為。
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【ステップ2】「本営違反」と認定される4つのステップ
では、どのような場合に「本営違反」と判断されるのでしょうか。行政(警察)は、単にキャストが客に優しくしたり、甘い言葉をかけたりしただけで、すぐに違反と認定するわけではありません。
法律違反として営業停止などの処分を下すには、客観的な証拠に基づき、以下の4つのステップ(要件)がすべて満たされていることが必要となります。
ステップ①:客がキャストに「特別な好意」を抱いている
まず大前提として、客側がキャストに対し、単なる「客と従業員」の関係を超えた恋愛感情や、自分は特別な存在だと認識させるほどの強い好意を抱いている状態が必要です。 これを立証する手がかりとしては、客がキャストに送ったLINEでの「好きです」「付き合ってください」といったメッセージ、SNS上での熱烈な応援投稿、店外でのデートや高価なプレゼントなどが挙げられます。
ステップ②:客が「キャストも自分を好いている」と誤信している
次に、客が一方的に好意を寄せているだけでなく、「キャストも自分のことを特別に思ってくれているに違いない」と誤信している状態が求められます。 この誤信は、キャスト側の言動によって作られます。例えば、キャストが「君だけが本命だよ」「将来は一緒になりたいね」といった甘い言葉をかけたり、個人的な悩みを打ち明けたりして、「二人は特別な関係だ」と思わせる行為がこれにあたります。
ステップ③:店側が、客の誤信を「知っていて利用している」
そして最も重要なのが、店やキャストが、客がそうした誤信をしていることを「知りながら、それを売上のために意図的に利用している」という点です。 例えば、店の営業日報や従業員間のグループチャットで「客Aは色恋でいけるから、次のイベントで高額ボトルを狙わせろ」といったやり取りが残っていれば、これは「意図的に利用した」ことの強力な証拠となり得ます。
ステップ④:客を「心理的に困惑させ」高額な飲食をさせた
最後に、上記①〜③の条件が揃った上で、キャストが客を心理的に追い込む「困惑させる行為」を行い、その結果として客に支払能力を超えるような高額な飲食をさせたという事実が必要です。法律が例示す「困惑させる行為」
とは、「この注文をしてくれないなら、もう会わないよ」と二人の関係の破綻をほのめかす行為や、「この売上がないとクビになるんだ、助けて」などと同情に訴えかける行為です。
行政は、これら4つのステップがすべて客観的な証拠で裏付けられて初めて、営業停止などの重い処分に踏み切ることができるのです。事業者としては、この4つのステップのいずれか一つでも成立させないよう、従業員教育や営業方法の管理を徹底することが、最大の防御策となります。
【ステップ3】違反した場合の厳しい結末(行政処分フロー)
もし違反が認定されると、事業者は以下のような厳しいプロセスをたどることになります。
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発覚・立入検査: 客からの通報やSNSでの告発などを端緒に、警察の生活安全課が店舗に立ち入ります。
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違反認定: 上記の構成要件に基づき、第18条の3違反が認定されます。
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行政処分: まずは「指示処分(改善命令)」、悪質な場合は即時または指示に従わない場合に「営業停止命令(最長6か月)」が下されます。
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許可取消し: 再三の違反や特に悪質なケースでは、「許可取消し」という最も重い処分が下されます。
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5年間の欠格事由: 一度許可を取り消されると、その経営者や役員は5年間、同一法人・関連会社を問わず、全国で風俗営業の新規許可を取得できなくなります。事実上、グループ全体の経営が頓挫するリスクをはらんでいます。
【ステップ4】事業者が今すぐやるべき5つのコンプライアンス対策
今回の法改正は、まさに「知らなかった」では済まされない、事業者の存続に関わる重大な内容です。違反を未然に防ぎ、健全な営業を続けるために、以下の5つの対策はもはや「推奨」ではなく「必須」と考え、直ちに実施してください。
1. 徹底した従業員教育と誓約書の取得
まず基本となるのが、従業員一人ひとりへの教育です。「本営(色恋営業)」がなぜ、どのように法律違反となるのかを具体例を挙げて研修し、その内容を理解した証として、全従業員から「遵守誓約書」を取得します。この研修は一度きりで終わらせず、新人研修の必須項目にするとともに、既存従業員へも毎月行うなど、定期的な実施が不可欠です。全従業員の署名が揃っているか、常に確認できる体制を整えましょう。
2. 明確な売掛(ツケ)管理ルールの策定と運用
トラブルの最大の温床である売掛(ツケ)は、厳格な社内規程のもとで管理します。客の身分証明書などで支払能力をきちんと確認した上で、客ごとに売掛の上限額や回収期限を明確に定めます。そして、規程を作るだけでなく、実際の売掛台帳と規程に乖離がないか、ルールが形骸化していないかを定期的に監査することが極めて重要です。
3. 接客・提供フローの透明化と記録の徹底
従業員の接客方法にも具体的なルールが必要です。恋愛感情を暗示するような営業トークを禁止事項として接客マニュアルに明記し、全従業員に浸透させます。特に、高額なシャンパンなどを提供する際は、後々の「頼んでいない」という紛争を避けるため、タブレットでの電子サインや注文内容が明記されたICレシートなど、客の明確な同意を客観的な証拠として記録に残すフローを構築してください。
4. 店外行動の厳格な管理
店外でのデートや私的な会食は、客に特別な関係を誤信させる大きな要因です。これを管理するため、従業員が客と店外で会うことを原則禁止とするか、あるいは会社の許可制とし、その目的や費用負担を会社が事前に把握・管理する体制を構築すべきです。この許可制が、単なる形式的な手続きにならないよう、申請内容が営業として適切かを会社が厳しく審査する運用が求められます。
5. 連絡手段の業務用端末への一元化
従業員の私用スマートフォンによる客との連絡は、管理の目が届かず、不適切な営業の温床となりかねません。顧客との連絡は、原則として会社が支給・管理する業務用端末に限定し、そのやり取りのログはいつでも確認できるよう保存することを徹底します。従業員がルールを破って私用スマホで連絡を取っていないか、定期的な聞き取りや抜き打ちでのチェックを行い、公私混同を許さないという店の明確な姿勢を示すことが重要です。
【実務Q&A】
Q. キャストと客が本当に恋愛関係になった場合はどうなりますか?
A. 真剣な交際自体は違法ではありません。しかし、その関係性を利用して「売上のためにシャンパンタワーを入れないと別れる」と迫ったり、「僕を助けると思って」と同情を引いて金銭を使わせたりした瞬間、法律違反のリスクが極めて高まります。営業行為とプライベートな関係は、明確に切り分ける運用が不可欠です。
Q. SNSでの「#担当しか勝たん」といった投稿もダメになりますか?
A. 投稿自体が直ちに違法となるわけではありません。しかし、そうした客の好意的な投稿を把握した上で、キャストがDMを送り「もっと応援してくれたら、君だけのものになるよ」などと返信し、高額な支払いに誘導すれば、まさに「誤信に乗じた」行為とみなされる可能性があります。
この第18条の3は、〈客の恋愛感情〉×〈心理的な困惑誘導〉という、従来のホストクラブビジネスの中核にあった営業手法を根本から否定するものです。一夜の射幸的な売上を追うのではなく、透明な料金体系と長期的な信頼関係に基づく健全なファンづくりへと、ビジネスモデルの転換が求められています。
3-2 売掛回収目的の本番行為強要禁止(22条の2)
客に対し
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有償性交(路上売春・出張ヘルス等)
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性風俗店就労(ソープ、デリヘル等)
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AV 出演
を要求・強要した場合、6か月以下懲役または100万円以下罰金+両罰規定で法人も処罰。さらに処分歴は欠格5年となり廃業リスクが跳ね上がります。
3-3 スカウトバック全面禁止(28条13項)
性風俗店が紹介者に金銭等を渡す行為を禁止。「ホスト→スカウト→風俗店→紹介料バック」という資金ルートを遮断し、犯罪収益の温床を断ち切る狙い。違反すれば上記と同等の罰則。
3-4 罰則強化ー無許可営業は法人3億円罰金
改正前の「法人200万円以下罰金」が一気に3億円へ。個人も懲役上限2年→5年、罰金200万円→1,000万円。行政処分逃れ目的の許可返納も無意味です。
3-5 欠格事由拡大
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許可取消しから5年以内の関連会社・旧役員→新規許可NG
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処分直前60日以内の役員が他社役員でもNG
名義ロンダリング対策として実質グループ全体が5年間営業不能になる可能性大。
3-6 広告・宣伝規制通達(2025 年6月4日警察庁丁保発第104 号)
通達は、
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「売上3億円プレイヤー」「伝説」「○位ランクイン」等の売上自慢
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「溺れろ」「貢げ」等の依存煽り
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「幹部補佐」「総支配人」などの役職誇示
――を清浄な風俗環境を害する広告としてNG 例示。店頭看板だけでなく SNS・宣伝車両にも適用。改善命令⇒不履行なら営業停止。
4 ケーススタディ
ケースA:甘い言葉で 300 万円ツケ→本営違反
ホスト X は客 Y に「俺の彼女になって」と LINE。Y は恋人関係を誤信しシャンパンラッシュ、月末にツケ 300 万円。X が「売掛払わないと店を辞める」と泣き落とし、さらに追加注文。
→ 18条の3違反。従業員教育不足を理由に、営業停止3カ月の処分が想定されます。
ケースB:売掛回収でデリヘル紹介→本番強要違反
ホスト Z は女客 W に 500 万円売掛。支払困難な W に「うちの知り合いソープなら稼げる」と紹介し、店から紹介料 50 万円受領。
→ 22条の2+スカウトバック禁止 で Z・店舗とも処罰。紹介料は犯罪収益として没収可。
5 業態別チェックリスト:あなたの店で今すぐ確認すべきこと
2025年6月28日に施行された改正風営法は、すべての風俗営業者に影響を与えますが、特に注意すべきポイントは業態によって異なります。自店の営業形態に合わせて、以下の項目を至急確認してください。
■ ホストクラブ
今回の改正で最も大きな影響を受けるホストクラブでは、店長や代表者が主導し、新設された第18条の3(本営禁止)に抵触しないための体制構築が急務です。具体的には、従業員に使わせてはいけない「色恋営業NGワードリスト」を作成・周知徹底すること、客ごとに売掛(ツケ)の上限額を定める規程を設けること、そして客との店外同伴を許可制にし、その目的を会社が管理することが求められます。
■ キャバクラ
キャバクラにおいては、会計の透明性がより一層求められます。経理担当者やマネージャーを中心に、メニューにサービス料などを含めた総額表示を徹底しましょう。また、キャストのモチベーションに関わるバックシステムも、「不明瞭なインセンティブで過度な営業をさせている」と疑われないよう、誰にでも分かる透明な仕組みに見直す必要があります。
■ ガールズバー
ガールズバーでは、その営業形態が風営法の「接待」にあたらないか、改めて確認が必要です。特に、客席を高い仕切りで区画したり、店内の照明を著しく暗くしたりすると、接待行為が行われやすい「個室」や「低照度店」と見なされ、風俗営業の許可が必要になる場合があります。オーナー自身が、現在の店舗の構造が許可内容と合致しているか、構造変更届の要否を所轄の警察署に相談・確認すべきでしょう。
■ スナック
多くのスナックは深夜0時以降も営業できる「深夜酒類提供飲食店」として届け出ていますが、この業態では「接待」は法律で禁じられています。改正法施行を機に、ママやマスターは、カラオケでデュエットする、客の隣に座って長時間話し込むといった行為が接待と見なされないか、深夜営業と接待の線引きを再確認し、スタッフ全員に周知することが重要です。
■ 性風俗店
ホストクラブ問題の背景にあった、女性を性風俗店へ紹介する金の流れを断つため、スカウトバックは全面的に禁止されました。事業主は、スカウト業者との間で交わしている既存の契約を見直し、紹介料の支払いに関する条項があれば、直ちに契約を破棄または修正する必要があります。今後、紹介料の支払いが発覚すれば、重い罰則の対象となります。
6 利用者 Q&A
Q. ツケ払いは違法になる?
A. 違法ではありません。ただし支払能力を超える額を負わせれば法律違反(18条の3)になる恐れ。
Q. ホストに脅され売春させられそう…
A. 22条の2違反。110番または #8778(警察相談) へ。LINE 画面・音声を保存。
Q. SNS で「伝説の○億円プレイヤー」と宣伝、大丈夫?
A. 通達が禁じる売上自慢広告に該当。看板・ポストとも即削除を。
7 罰則まとめ:違反行為と罰則を一挙に整理
最後に、今回の法改正で定められた主要な違反行為と、それに対する罰則を整理しておきましょう。どの行為が「行政処分」の対象で、どれが「刑事罰」の対象になるのかを正確に把握することが、リスク管理の第一歩です。
● 恋愛感情を利用した過度な営業(本営)
ホストクラブなどで問題視された、恋愛感情を利用して高額な飲食をさせる「本営」行為(第18条の3)。これ自体に刑事罰(懲役や罰金)はありません。しかし、違反が認定されると、店に対して営業停止(最長6か月)や許可取消しといった重い行政処分が科されます。
● 売掛金回収のための本番行為の強要
売掛(ツケ)を支払わせる目的で、売春などの本番行為を要求・強要する行為(第22条の2)。これは明確な犯罪であり、刑事罰として「6か月以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。さらに、違反した店は許可取消しとなり、その後5年間は再取得ができない「欠格事由」にも該当する、極めて厳しい処分が待っています。
● スカウトバック(紹介料の支払い)
ホストなどが女性客を性風俗店に紹介し、見返りに金銭を受け取る「スカウトバック」(第28条の13)。これも上記の本番行為の強要と同等の刑事罰(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)の対象です。発覚すれば、店の許可は取り消されます。
● 無許可営業
そして、そもそも風俗営業の許可を取らずに営業する「無許可営業」(第3条違反)に対する罰則は、今回最も厳しくなりました。特に法人に対しては、罰金の上限が従来の200万円から一気に「3億円以下」へと大幅に引き上げられています。もちろん、許可がないため行政処分はありませんが、事業の存続を揺るがす、極めて重い刑事罰と言えるでしょう。
8 まとめと今後の展望
今回の改正は「客の恋愛感情につけ込む営業=本営」と「売掛回収のための性搾取=本番行為強要」を切り分けた上で、前者は行政処分、後者は刑事罰という二段構えを導入した点が画期的です。広告規制も含め、夜の街は「売上競争から顧客満足・安全重視」へシフトせざるを得ません。法改正がゴールではなくスタート。
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事業者 は内部統制と従業員教育を徹底し、健全経営をアピールするチャンス。
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スタッフ は過激な売上至上主義から脱却し、接客スキルと長期ファンづくりに注力すべき時代。
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利用者 はツケ管理と相談窓口の早期活用で自己防衛。
健全なナイトレジャー文化は、業界・行政・利用者が三位一体で築くもの――改正風営法を追い風に、「夜の街リブート元年」が始まります。