
名誉毀損への対応では、民事上の損害賠償・削除・発信者情報開示と、刑事上の名誉毀損罪を区別します。似た表現を用いる場面でも、必要な要件や手続は同じではありません。
民事上の名誉毀損と名誉感情侵害
民事上の名誉毀損では、故意・過失による社会的評価の低下、損害、因果関係などを検討します。具体的な事実の指摘だけでなく、意見・論評による名誉毀損も問題になります。侮辱的表現による名誉感情侵害は、社会通念上許される限度を超えるかを判断します。
投稿が誰を指すか、一般の読者が全文をどう理解するか、前後の文脈も確認します。実名がなくても、プロフィール、源氏名、写真、勤務先等から特定できる場合があります。同定可能性とは|実名がなくても名誉毀損は成立するか判例で解説をご覧ください。
刑法上の名誉毀損罪
刑法230条は、公然と事実を摘示し、他人の名誉を毀損する故意の行為を処罰します。具体的事実を摘示しない侮辱は231条の侮辱罪が問題になります。民事の判断だけで、犯罪の成立が当然に決まるわけではありません。
真実であれば常に許されるわけではない
民事の事実摘示による名誉毀損では、公共の利害に関する事実を専ら公益目的で摘示し、その重要部分が真実と証明された場合に違法性が否定されます。公共性・公益目的だけ、または真実性だけで、常に免責されるというものではありません。
公共性・公益目的が認められる場面で、真実と信じる相当の理由があれば、真実の証明がなくても故意・過失が否定されることがあります。真実性による違法性の否定と、真実相当性による故意・過失の否定を区別します。
最高裁昭和41年6月23日判決は、衆議院議員総選挙の候補者についての報道を扱い、真実と認められた部分と、真実の証明はないものの真実と信じる相当の理由があった部分について責任を否定しました。
意見・論評と事前差止め
意見・論評でも、公共性・公益目的、前提事実の重要部分の真実性・真実相当性、論評の域を逸脱する人身攻撃等があるかを検討します。「感想」「疑惑」という語を付けるだけで安全になるわけではありません。
北方ジャーナル判決は、公務員や公職候補者への評価・批判の事前差止めを原則として認めず、虚偽又は公益目的でないことの明白性と、重大で著しく回復困難な損害のおそれがある場合に限り例外を認めました。投稿後の削除と、公表前の差止めも区別して検討する必要があります。
被害に遭った場合
証拠を保存し、インターネット上の違法な投稿を削除してもらうにはどんな方法がありますか?、発信者情報開示請求とは|費用・期間・手続の流れを弁護士が解説、誹謗中傷記事を書き込んだ投稿者への損害賠償請求(慰謝料)と示談交渉、インターネットで誹謗中傷を刑事告訴して受理してもらえるかを目的に応じて検討します。投稿者不詳でも刑事告訴を検討できる場合があり、開示の完了を必ず待つ必要はありません。
参考資料
法令・公表資料は2026年10月3日に確認しました。個別の投稿についての結論は、内容や証拠、事業者の保有情報によって異なります。




