誹謗中傷として発信者情報開示請求を受けた投稿者(加害者)の対応

この記事のポイント(3行まとめ)

  • 「発信者情報開示請求に係る意見照会書」は、開示請求を受けたプロバイダが投稿者本人の意見を聴くために送る書面(情プラ法6条1項)
  • 回答期限内に、開示に同意するか否かと、同意しない場合はその理由を具体的に述べる必要がある。放置しても開示の判断は裁判所・プロバイダが行うため不利になりうる
  • 開示に同意しなくても、裁判所が権利侵害を認めれば氏名・住所は開示される。開示後の損害賠償・示談まで見据えた対応を早めに検討すべき

インターネット上での誹謗中傷の書き込みなどに対して、被害者が発信者情報開示請求を行った場合には、その投稿を行った投稿者に「発信者情報開示請求に係る意見照会書」という書面が送られます。投稿者は「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が手元に届きどう対応するべきか悩むことが多いです。「発信者情報開示請求に係る意見照会書」とは何か、対応について、投稿者からいただくご相談を踏まえてまとめました。

投稿者からのご相談の流れ

「発信者情報開示請求に係る意見照会書」とは

「発信者情報開示請求に係る意見照会書」とは

情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法。旧プロバイダ責任制限法)6条1項

意見照会について規定する情プラ法6条1項では、「開示関係役務提供者(注:電話会社等のことです)は、前条第一項又は第二項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない。」と規定されています。

現行法では、開示に応じるべきでないと回答する場合にはその理由もあわせて述べることが条文上明記されており、意見照会書への回答では「開示に同意しない」とだけ書くのではなく、権利侵害が成立しない理由を具体的に述べることが重要です。

このような法律の規定があることから、発信者情報開示請求を受けたプロバイダは、契約者に対して、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」という書面を送付しています。

「発信者情報開示請求に係る意見照会書」には何が書かれているのか

「発信者情報開示請求に係る意見照会書」には通常、発信者情報開示請求書をコピーした書類、回答書のひな型が添付されています。発信者情報開示請求書(添付資料を含む)のうち、どの部分を発信者(契約者)に開示してよいかは、事前に請求者の意見を聴くことになっています。一般には、以下のものが記載、添付されていますが、請求者本人の氏名は開示していません。ただし、代理人弁護士の氏名・連絡先については、開示しているプロバイダもあります。
その場合は、発信者(契約者)から請求者の代理人弁護士の事務所まで、本人又は代理人弁護士から示談の申し入れがあることも時々あります。

  • 掲載先のURL
  • 掲載された情報
  • 侵害情報等(侵害された権利・権利が明らかに侵害されたとする理由)
  • 発信者情報の開示を受ける正当な理由(損害賠償請求権の行使のため等)
  • 開示請求の対象となる発信者情報(氏名、住所、メールアドレス)
  • 証拠(掲示板のコピー等)

参考までに、発信者情報開示請求書のひな型は以下のとおりです。

「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が送られてくる時期

「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が送られてくる時期

プロバイダに対して任意の発信者情報開示請求をしている場合はその時点、裁判所に発信者情報開示命令の申立てや開示請求訴訟の提起をしている場合はその時点となります。現在は非訟手続である発信者情報開示命令が標準的に使われており、意見照会書もこの手続に伴って届くことが多くなっています。

なお、任意の発信者情報開示請求をした後に、発信者の同意が得られず発信者情報開示請求訴訟に移行した場合は、都度意見照会書が送付されてきます。ただ、プロバイダによって扱いが異なるようで、任意の発信者情報開示請求の際に回答書を提出していれば、重ねて発信者情報開示請求訴訟の際には回答を求めないときもあります。

回答書には何を書けばよいのか

回答書には何を書けばよいのか

回答は照会書に記載された期限内に行います。2週間程度の回答期間が設けられることがありますが、法律が一律に定める期間ではありません。同意・不同意と理由を、投稿全文や資料に基づいて整理します。

「発信者情報の開示に同意する」に〇を付けて回答する場合は、請求者に契約者の氏名、住所、メールアドレスが開示されることになります。

不同意とする理由は具体的に説明し、必要な証拠を添付します。内容が多い場合は別紙を用います。用紙の枚数が決まっているわけではなく、結論に必要な事実と根拠を分かりやすく示すことが大切です。

開示に同意するか否かの判断

開示に同意する場合

開示に同意する場合

「発信者情報の開示に同意する」に〇を付けて回答する場合は、プロバイダから開示請求者に対し、契約者の①氏名又は名称、②住所、③メールアドレスが開示されます。
開示に同意する選択をするのは、発信者情報開示請求訴訟の結果、明らかに開示が認められるような書き込みをしてしまったような場合です。

開示請求の判決をを待って、開示を命じる判決が出た場合にその後のことを考えればよいという考え方もあります。その場合は、「発信者情報の開示に同意しない」に〇を付けて回答します。

しかし、判決を待たずに自発的に開示に応じて反省の意を表する(弁護士を通じて請求者と示談交渉を行う)という選択をした方が、請求者の気持ちも落ち着き、示談金額が低くなるケースも多々あります。判決の結果を受けて発信者情報が開示される場合、請求者が支払う弁護士費用が高額になる場合もありますので、判決前に開示に同意しておくメリットがあるケースもあります。

開示に不同意の場合

開示に不同意の場合

請求者が友人、知人、同僚、上司、部下などお互いよく知っている関係にある場合

上記のとおり、明らかに開示が認められるような書き込みをしてしまったような場合は、「発信者情報の開示に同意する」という選択には合理性があります。
しかし、書き込みの相手が自分の友人、知人、会社・お店の同僚、上司、部下などのお互いによく知っている関係にある場合、開示に同意するという選択をするには高いハードルがあるもの事実です。

実際、誹謗中傷をしていたのが、いつも相談に乗ってくれていた友人だったというケースもあります。友人でなくても、お互いよく知っている相手のことをネットで書き込んで、開示請求されたとなると、「発信者情報の開示に同意する」という選択がしにくいことは心情的には理解できます。

開示が認められない可能性がある場合

  1. 同定可能性(特定可能性)が認められない場合
  2. 意見や感想を書いたに過ぎない場合
  3. 名誉や信用が明らかに低下したとはいえない場合
  4. 書込みの内容が真実であり、公表する正当な理由がある場合(名誉毀損)
  5. 多くの人が知っている情報を投稿した場合(プライバシー侵害)
  6. 侮辱的表現の程度が低い場合

1.同定可能性(特定可能性)が認められない場合

名誉毀損やプライバシー侵害を根拠に開示請求する場合に主に問題になりますが、投稿の対象が誰のことを指しているのか明らかでない場合は、同定可能性が認められず、名誉毀損やプライバシー侵害は成立しません。

名誉毀損やプライバシー侵害とは、第三者から見て、投稿の対象者の名誉やプライバシーが侵害されたと認められる場合に成立するのですから、第三者から見て、投稿の対象者がどこの誰か特定できないのであれば、その人の名誉やプライバシーが侵害されたとはいえないのです。

なお、被害者の方から「自分のことを言っているに決まっている」と説明されることがありますが、自分以外の人の目から見て特定できる必要があり、そのような特定が難しい投稿は、侮辱の成否が問題になることがあります。

2.意見や感想を書いたに過ぎない場合

意見・感想にも名誉毀損や名誉感情侵害が成立する場合があります。味や接客への主観的な不満だけでは通常は足りませんが、前提事実、公共性・公益目的、人身攻撃に及ぶか等を確認します。

事実の摘示の場合、重要部分の真実性に加え、公共性と専ら公益を図る目的も問題になります。真実と信じる相当の理由は故意・過失に関わります。単に「真実」と回答するだけでは足りません。

3.名誉や信用が明らかに低下したとはいえない場合

対象が公人・著名人・法人であることは、公共性や表現の文脈等に影響する事情ですが、社会的評価を低下させる投稿が一般個人の場合と別の一律の閾値で許される制度ではありません。権利侵害と免責の要件をそれぞれ検討します。

そこで、公人や有名人、法人などに対する投稿においては、「名誉や信用が明らかに低下したとはいえない」と反論することもあります。

4.書込みの内容が真実であり、公表する正当な理由がある場合(名誉毀損)

名誉毀損が問題となる投稿で、投稿内容が真実であり、そのことを公表する正当な理由(法律的には、「公共の利害に関する事実である」「公益目的がある」などといいます)があるような場合は、名誉毀損の違法性が否定されて、名誉毀損が成立しないことになります。

しかし、投稿内容が真実であることの証明は難しいことが多く、仮に真実であったとしても、その証拠を提出することは難しい場合が多いです。仮に、そのような証拠があるとしても、その証拠を提出し、プロバイダが証拠として裁判所に提出した場合、その証拠を見ただけで誰が投稿したのか分かってしまうこともあります。例えば、会社の上司がパワハラをしているという投稿だった場合、それが真実であることの証拠として、部下を怒鳴りつけている録音データを提出した場合、そのような録音をしたのは誰なのかは容易に分かってしまいます。

なお、投稿者の中には、インターネット(SNS)上に書かれていた情報をもとに、投稿内容は真実であるという回答をする人もいますが、インターネット(SNS)上に書かれていた情報が正しいとは限りませんので、これだけで真実であるとの証明にはなりません。

5.多くの人が知っている情報を投稿した場合(プライバシー侵害)

プライバシー情報と認められるには、①個人に関する情報(個人の住所、電話番号など)であり、②一般的に見て、それらの情報が公開されることは望まない性質のものであり、③それらの情報が一般に知られていないことが必要です。
例えば、女性Aがシングルマザーであるという事実は、①個人に関する情報であり、②シングルマザーであることは一般的に見て、公開されることは望まない性質の情報であり、③女性Aがシングルマザーであることは、一般に知られていないということであれば、女性Aにとって、シングルマザーであるという情報はプライバシー情報となります。

既に報道された情報でも、その性質、時間の経過、再拡散の範囲や必要性等によって、プライバシー侵害が問題になります。著名人であることや、以前に多くの人が知っていたことだけで保護の対象外になるわけではありません。

6.侮辱的表現の程度が低い場合

匿名掲示板やSNSでは、侮辱的な投稿がなされることも多いです。しかし、侮辱か否かは感覚的な問題であり人によって受け止め方が異なり、また、批判や批評との区別も明確にはできません。
そのため、侮辱的表現が損害賠償の対象となるのは、「社会通念上許される限度を超える場合」すなわち、常識的に見て許される限度を超える場合に限定されます。

ただ、裁判例を見てみると、どのような表現が「社会通念上許される限度を超える場合」に該当するかは判断が難しいと言わざるを得ません。

実際開示されてしまうのか

実際開示されてしまうのか

回答書の提出

発信者情報開示請求の裁判では、投稿者からの意見を聴く手続きが取られます。本人が書いた回答書の場合は、プロバイダが裁判でそのまま提出することはあまりありません。ただ、弁護士が代理人として作成した回答書の場合は、弁護士の名前も明記して提出されることもあります。

私の経験上では、弁護士が名前を明記した回答書が提出された場合は、裁判所も慎重に判断している感じがします。ただ、弁護士としても、相手方に氏名を知られたくないという判断があるためか、弁護士名を伏して提出されたり、本人名義で回答書のみ作成している弁護士も多いようです。

私は、弁護士名を隠すことは求めていませんが、弁護士に対する誹謗中傷を恐れているのかもしれません。いろいろな考え方があるかもしれませんが、氏名を明らかにして回答をする方が、信頼性は増すと思います。

意見照会書が送付される回数

弁護士によっては、任意の開示請求を行うことなく、いきなり発信者情報開示請求訴訟を提起する人もいますが、まずは任意の開示請求を行い、プロバイダに開示を拒否されたら訴訟に移行するという流れで進めるケースが多いと思います。
このような2段階の手続きの場合、プロバイダによっては2度にわたり意見照会を求めることもありますが(訴訟中に複数回にわたり意見を求める場合もあります。)、任意の開示請求の際に意見照会を求めたことを以って、訴訟時には繰り返し意見照会を求めないプロバイダもあります。

したがいまして、任意の開示請求の際に意見照会を求められた際には、簡単に開示を拒否するという回答ではなく、訴訟においても対応可能なように、しっかりした内容で回答することが重要です。

回答書は裁判での証拠として提出される

回答書や資料が裁判で提出され、請求者が読むことになる可能性があります。不同意の理由を説明する際にも、本人を特定させる情報や第三者の情報を安易に含めず、提出範囲と伏せる情報について接続業者や弁護士に相談してください。

代理人弁護士に回答書の作成を依頼するメリットは、名義人を明らかにして、回答書を裁判所に提出できることにあります(もちろん、発信者の氏名は記載されません)。

回答しない場合と、不同意の場合

回答がないことは、開示に同意したことを意味しません。一方、不同意と回答しても、開示の法定要件を満たすと判断されれば開示される場合があります。意見聴取には法6条の例外があり、同意を得るための投票のような制度ではありません。

参考資料

法令・公表資料は2026年10月3日に確認しました。個別の投稿についての結論は、内容や証拠、事業者の保有情報によって異なります。

▼ お問い合わせはこちら(全国対応) 虎ノ門法律特許事務所

弁護士 大熊 裕司
弁護士 大熊 裕司

誹謗中傷の被害にお悩みの方、誹謗中傷と捉えられてしまう投稿を行なってしまいお悩みの方、まずはお気軽にご相談ください。全国からのお問い合わせに対応しております。

お問い合わせは無料です。お問い合わせの際に、誹謗中傷されている掲示板URLと該当レス番号もお伝えください。

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電話対応時間 平日 午前9時~午後9時、土日祝 午前9時〜午後6時
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▼ 料金について

相談料

30分 5500円になります。
発信者本人(加害者)の方からのご相談にも応じます。
なお、法律相談後、事件を受任するに至った場合は、法律相談料は不要です。

ネット書込み削除、書込み者特定の費用

投稿記事の任意削除

基本料金:5万5000円~
※サイトや削除件数によって料金が異なります。

投稿記事削除の仮処分

【着手金】 22万円~
【報酬金】0円

発信者情報開示命令申立(書込み者の氏名、住所の開示)

【着手金】サイト管理者への開示請求:22万円
経由プロバイダへの開示請求:22万円
両方の手続を行う場合の合計:44万円
【報酬金】0円

書込み者に対する損害賠償請求

【示談交渉の場合】
・着手金:16万5000円~
・報酬金:11~17.6%(報酬基準による)

【訴訟の場合】
・着手金:22万円~
・報酬金:11~17.6%(報酬基準による)

▼ お支払方法について

・クレジットカードでのお支払い可能です。
・分割払い・ローン払い可能です。

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