インターネットにおける誹謗中傷・風評被害への対応
誹謗中傷とは
誹謗中傷という用語が法律用語として存在するわけではありません。一般的に、他人を傷つけるような言葉を投げつけられたり、インターネット上で投稿されたりしたときに、「誹謗中傷」されたなどと言ったりします。
一般には、他人の悪口を意味していると考えてよいと思いますが、言葉による悪口だけではなく、自分のプライバシー(人に知られたくない情報)が公開されたり、自分がSNSで公開している顔写真を他のサイトに勝手に投稿されたり、成りすましのアカウントを作成されたりすることも、広く「誹謗中傷」と呼んでいます。
本ブログでも、インターネット上で他人に不快感を与えるような投稿を「誹謗中傷」と呼んで説明します。
風評被害とは
誹謗中傷で相談を受ける際、「風評被害」という言葉もよく耳にします。「風評被害」とは、インターネットで誹謗中傷を受けたことが原因で、経済的な被害(損失)を受けたことを意味します。例えば、インターネットでの書込みが原因で、取引が取り消されたり、売上げが減少したなどの損害です。
風評被害を受けるのは会社などの企業(自営業者)であることが多いですが、キャバクラ嬢、風俗嬢、ホステス、ホストなどの仕事をしている人も風評被害を被ることが多いと言えます。
誹謗中傷対策の必要性
かつては、インターネットの書き込みなど誰も信用しないのだから、誹謗中傷など気にせず、ネットなど見なければよいという意見もありました。
しかし、最近は、SNSや掲示板の投稿記事、クチコミなどをみて購入する商品や行く店を選ぶ傾向が強くなり、ネットの書き込みを気にしなければよいというわけにはいかなくなりました。
ネットの誹謗中傷をそのまま放置しておくと、企業や個人に対する消費者や周りの評価が低下し、信用の低下や経済的損失につながるリスクがかなり高くなるのがネット社会の現実です。
本ブログでは、ネット上の誹謗中傷にどのように対応していくべきか、虎ノ門法律特許事務所の数多くの経験に基づいて、解説していきます。
インターネット事件の現状
東京地裁保全部においては、インターネット関係仮処分の事件数は増加傾向にあり、近年では、仮の地位を定める仮処分の6割以上がインターネット関係仮処分である(関述之・小川直人編著「インターネット関係仮処分の実務」9頁)。
誹謗中傷による被害
ネット上で誹謗・中傷が行われると、以下のような悪影響が生じることになりかねません。その意味で、ネット対策(誹謗・中傷対策)は、迅速に対応する必要があります。
- 売上の低下、顧客離れ
- 風評被害
- 内定獲得が困難になる
- 内定辞退が増える
- 精神的に辛い思いをする
- 従業員の士気が低下する
証拠保存
証拠保存の重要性
発信者情報開示(投稿者の特定)や投稿記事の削除を請求するにあたっては、証拠を保存して提出する必要があります。コンテンツプロバイダ(掲示板の管理者等)や経由プロバイダ(インターネットサービスを提供している電話会社等)が知りたい情報は、
- 問題となっている投稿記事の内容
- 投稿された時間はいつか(例えば「2020年4月1日午前9時30分」と印字されたもの)
- 投稿記事が記載されたURL
が必要となります。
匿名掲示板(5ちゃんねる)などで、一度投稿した投稿記事は、投稿者が自ら削除できないシステムの場合はあまり心配する必要はありませんが、ツイッターなど投稿者が自ら投稿を削除できるシステムのサイトの場合、投稿者の特定のためには直ちに上記情報を保存しておく必要がありますので、注意が必要です。
パソコンであれば、PDFで保存する方法が簡単ですが、URLが表示されるように保存する必要があります。
スマートフォンやパソコンでスクリーンショット保存をするケースもありますが、その場合も、
- 投稿記事が途切れることなく表示されているか
- 投稿時間が表示されているか
- URLが表示されているか
に注意する必要があります。
証拠保存の具体的例
虎ノ門法律特許事務所のHP(http://www.toranomon-law.jp/)をPDFで保存すると以下のとおり保存されます。赤丸で囲ってあるとおり、URLが表示されています。
ネット誹謗中傷・炎上の特徴と背景
4つの特徴
①匿名性・・・誰が投稿したかということは通常わからない。
②簡易性・・・パソコン、タブレット、スマホ等でいつでもどこでも、入力して投稿ボタンを押すだけでよい。現代は、万人がSNS等に常時接続しているといってよい。
③被害認識の困難性・・・ネット上の情報は膨大で、中傷が書き込まれたことを即時に認識することは難しい。
④事後対策の困難性・・・即時に削除することは通常困難であり、削除するには時間がかかる。犯人を「特定」するにはさらに時間がかかる。
ネット誹謗中傷対策の2つの方法
記事自体を削除する
送信防止措置、削除仮処分等を行います。詳しくは、以下のブログをご覧ください。
中傷している者を特定する
発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法)を活用する。
特定後、以下のような手続きに移行します。
- 損害賠償請求
- 刑事告訴(名誉毀損等)