消えない誹謗中傷記事は裁判で削除できるか――note・Bloggerへの削除請求を認めた2つの最新判決から学ぶ「削除の裁判」の実務

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弁護士大熊 裕司
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「匿名のブログに実名で誹謗中傷を書かれた。投稿者が誰かわからないのに、記事を消すことはできるのか」
「10年前の事件の記事が、いまだに自分の名前で検索すると出てくる。もう消せないのか」

こうしたご相談は、当事務所でも最も多いものの一つです。結論からいえば、投稿者がわからなくても、記事が古くても、サイトの運営者を相手に裁判で削除を求める道があります

本記事では、いずれもサイト運営者への削除請求を認容した2つの注目判決――noteの記事の削除を命じた東京地判令和8年1月29日判決文PDF・裁判所ウェブサイト)と、掲載から11年が経過したBlogger(ブロガー)のブログ記事の削除を命じた名古屋地判令和6年8月8日判決文PDF・裁判所ウェブサイト)――を素材に、「削除の裁判」の実務を解説します。

前提知識:削除を求める4つのルート

インターネット上の投稿の削除を求める方法には、大きく4つのルートがあります。

  1. 投稿者本人への請求:投稿者がわかっていれば直接請求できますが、匿名投稿では先に発信者情報開示が必要になります。
  2. サイト運営者への任意の削除依頼:各サイトの通報フォーム等から削除を依頼する方法です。費用がかからない反面、応じるかは運営者次第です。
  3. 情プラ法の削除申出:2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、X・Instagram・Amebaブログなどの「大規模特定電気通信役務提供者」には、削除申出への対応体制と、原則14日以内の判断・通知が義務付けられました。ただし、対象は指定を受けた大規模サービスに限られます。
  4. 裁判所を通じた請求(仮処分・訴訟):運営者が任意に応じない場合の最終手段です。法的根拠は、名誉権・プライバシーなどの人格権に基づく妨害排除請求権。投稿者ではなく、記事を管理するサイト運営者を被告として、削除を命じる判決(決定)を求めます。
図1 誹謗中傷記事の削除を求める4つのルート

今回の2判決は、いずれも4つ目のルート、すなわちサイト運営者を被告とする削除訴訟の判決です。noteのような国内事業者だけでなく、Bloggerのような海外系サービスについても、日本の裁判所で削除を命じる判決が現に出ている――この点だけでも、被害に悩む方には知っていただきたい事実です。

判決1:note記事の削除を命じた東京地判令和8年1月29日

事案

原告は、インターネット番組に出演したこともある男性。noteに投稿された対話形式の記事が、①原告が金銭を払い「コネ枠」で番組に出演したと受け取れる記載、②原告が何者かに弱みを握られ脅迫されていたのではないかという記載、③風俗店で従業員に怪我をさせた「D」なる人物と原告が同一人物であると受け取れる記載、④原告が風俗店を出入り禁止になったと受け取れる記載を含むとして、noteの運営会社を被告に、記事の削除を求めました。

興味深いのは、訴訟提起後に投稿者が記事を「修正」したことです。noteが投稿者に意見照会を行ったところ、投稿者は問題箇所を一部修正した「修正版」を投稿し直しました。裁判所は、この修正後の記事について判断しています。

裁判所の判断:4つの記載のうち3つが名誉毀損

裁判所は、社会的評価の低下も匿名人物との同定可能性も「一般の読者の普通の注意と読み方」を基準に判断するという確立した判例(最判昭和31年7月20日・民集10巻8号1059頁・判決文PDF・裁判所ウェブサイト)を出発点に、4つの記載を個別に検討しました。実務上重要なポイントは3つあります。

図2 note事件:4つの記載の判断と記事全体削除

第1に、「打ち消し文言」は通用しませんでした。「あくまで一般論だけど」「もちろん正当な評価や実績で出演したんだと思うよ」といった記載を添えても、前後の文脈から読者が「コネ出演」の事実を読み取れる以上、黙示の事実摘示にあたる――裁判所はそう判断しました。「〜かもしれない」「個人の感想です」といった逃げ口上を付ければ責任を免れる、という理解が誤りであることを明確にした判断です。

第2に、仮名でも「同定可能性」は認められました。問題の記事は、風俗店でのトラブルを「D」なる人物の話として書いていましたが、記事全体が原告に関する記事であり、原告とDの行動を対比する構成だったことから、読者は「D=原告」と理解すると認定されました。しかも、投稿者が修正版で「Dは原告とは別人と思われる」という記載を追加していたにもかかわらず、記事全体の構成から同定可能性は否定されませんでした。

第3に、記事「全体」の削除が命じられました。4つの記載のうち1つ(脅迫の仮説を述べた部分)は「具体的事実に基づかない仮説・感想」として名誉毀損が否定されましたが、裁判所は、記事が一般私人である原告の誹謗中傷を目的としたことが明らかで、名誉毀損にあたる記述が記事の主要な主題に関わる以上、記事全体を削除するのが相当としました。名誉毀損部分の抜き出し削除ではなく全体削除を認めた点は、被害者側にとって大きな意味があります。

判決2:11年前のブログ記事の削除を命じた名古屋地判令和6年8月8日

事案

原告は、かつて経営する会社の資金調達をめぐり出資法違反で有罪判決(懲役2年・執行猶予5年)を受けた男性。執行猶予期間を無事に経過して刑の言渡しは効力を失い、再起業の準備を始めましたが、氏名で検索すると、平成25年に掲載された「倒産詐欺」等と題するBloggerのブログ記事(「詐欺のような」「詐欺の可能性が高い」等と論評するもの)が今なお表示される状態でした。そこで、Bloggerサービスの提供者を被告に、記事の削除を求めました。

裁判所の判断:掲載時は適法でも「時の経過」で削除できる

この判決の特徴は、意見・論評型の記事の削除について判断枠組みを示したことです。

裁判所は、事前差止めに関する北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日・民集40巻4号872頁・判決文PDF・裁判所ウェブサイト)と、公正な論評の法理(最判平成元年12月21日・民集43巻12号2252頁・判決文PDF・裁判所ウェブサイト)を組み合わせ、意見・論評の削除は、①その意見・論評が公正な論評に当たらないことが明白であり、かつ②被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに認められる、という厳格な枠組みを立てました。

図3 意見・論評型の記事の削除が認められる要件(Blogger事件)

そのうえで注目すべきは、あてはめです。裁判所は、掲載当時の記事は公正な論評だったと認めました。有罪判決の事実からすれば前提事実の主要な点は真実であり、当時は公共の関心事だったからです。

しかし、そこで終わりませんでした。口頭弁論終結時までに新聞報道から11年以上、有罪判決からも9年半以上が経過し、執行猶予期間の満了により刑の言渡しは効力を失い、記事が引用していた新聞記事もネット上で閲覧できなくなっている。こうした事情から、今の時点では、公的立場にない原告の評価を低下させ続けることを正当化するほどの公共性はないことが明白だと判断したのです。

そして、氏名検索で記事が表示され続ける限り、取引先が取引を避けて再起業が困難になるおそれは「単なる抽象的な可能性にとどまらず、十分に現実的」として、回復困難な損害も肯定。削除請求を認容しました。

過去に罪を犯した人の更生と、報道記事の公共性との調整――いわゆる「忘れられる権利」に連なる問題については、最高裁が、Google検索結果の削除に関し、事実の性質・内容、伝達される範囲と被害の程度、記事の目的や意義、掲載時の社会的状況とその後の変化などを比較衡量し、公表されない法的利益が優越することが明らかな場合に削除を認めるという枠組みを示しています(最決平成29年1月31日・民集71巻1号63頁・決定文PDF・裁判所ウェブサイト)。本判決は、検索結果ではなく記事そのものの削除の場面で、時の経過による公共性の喪失を正面から認めた裁判例として、実務上の参照価値が高い判決です。

実務への影響:削除の裁判を成功させるポイント

2つの判決から、削除請求の実務のポイントを整理します。

  1. 投稿者不明でも諦めない。削除だけが目的なら、発信者情報開示を経ずに、サイト運営者への削除請求(任意依頼→仮処分・訴訟)で足ります。noteのような国内事業者にも、海外系サービスにも、日本の裁判所の判決は現に出ています。
  2. 「一般論」「〜だと思う」は防御になっていない。打ち消し文言付きの誹謗中傷、仮名を使ったほのめかしでも、一般読者の読み方を基準に名誉毀損が成立し得ます。被害者側は、記事の文脈・構成を丁寧に主張して黙示の事実摘示を立証することになります。
  3. 意見・論評型の記事はハードルが上がる。Blogger事件の枠組みでは「公正な論評に当たらないことが明白」であることまで必要です。事実摘示型か意見論評型かの見極めが、削除の見通しを立てる出発点になります。
  4. 古い記事は「時の経過」が武器になる。掲載時に適法だった記事でも、年月の経過、刑の言渡しの失効、報道の消滅などにより公共性が失われれば削除が認められます。前科報道系の記事に悩む方には重要な判断です。
  5. 「実害」の立証を準備する。検索結果の画面、取引や就職への具体的影響など、回復困難な損害を基礎付ける証拠の積み上げが、削除認容の決め手になります。

まとめ

  • 誹謗中傷記事の削除は、投稿者が不明でも、サイト運営者を相手方とする人格権に基づく削除請求で実現できます。
  • note事件(東京地判令和8年1月29日)は、打ち消し文言や仮名によるほのめかし記事について名誉毀損を認め、記事全体の削除を命じました。
  • Blogger事件(名古屋地判令和6年8月8日)は、意見・論評型の記事について厳格な判断枠組みを示しつつ、時の経過による公共性の喪失を理由に、11年前の記事の削除を命じました。
  • 記事の性質(事実摘示か意見論評か)、経過年数、実害の立証などによって、採るべき戦略は変わります。

削除請求は、対象サービスの特性と裁判例の蓄積を踏まえた見通しの立て方が成否を分けます。ネット上の記事にお悩みの方は、早めに削除請求・発信者情報開示の実務に精通した弁護士にご相談ください。

出典・参考判例

参考文献

  • 内田貴「インターネット上の口コミの削除請求――その法律構成について」ジュリスト1586号(2023年)74頁

本記事は一般的な情報提供を目的とするものであり、法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な法律問題については、弁護士にご相談ください。

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なお、法律相談後、事件を受任するに至った場合は、法律相談料は不要です。

ネット書込み削除、書込み者特定の費用

投稿記事の任意削除

基本料金:5万5000円~
※サイトや削除件数によって料金が異なります。

投稿記事削除の仮処分

【着手金】 22万円~
【報酬金】0円

発信者情報開示命令申立(書込み者の氏名、住所の開示)

【着手金】44万円~
【報酬金】0円

書込み者に対する損害賠償請求

【示談交渉の場合】
・着手金:16万5000円~
・報酬金:17.6%

【訴訟の場合】
・着手金:22万円~
・報酬金:17.6%

お支払方法について

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